AI時代の韓国半導体企業が作ったもの
現在、世界で最も熱い株式市場について話すとしたら、韓国抜きにしては語れないでしょう。これまで、韓国株式市場はグローバル市場において「コリア・ディスカウント」、すなわち地政学的リスクや不十分なガバナンスなどの要因により企業価値が低く評価されてきました。しかし、昨年から雰囲気が変わりました。
その原動力となっているのが半導体です。ハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)によるAI半導体需要が急増し、SKハイニックスとサムスン電子は再び韓国証券市場の中心に立ちました。両企業の時価総額の割合はKOSPI全体の約半分まで膨らみました。この流れは韓国にとどまらず、米国のMicron(マイクロン)、日本のKIOXIA (キオクシア)といったメモリ・ストレージに強みを持つ世界中の企業へと拡大しました。AIインフラ需要の恩恵を直接受ける企業として評価され、株価が大幅に上昇したのです。

実際、昨年6月に2,800台だったKOSPI指数は、1年で8,800台近くまで急騰し、その後は調整局面に入ったものの、世界中の投資家の注目を集めました。韓国株式市場がこれまで大きく変動してきた理由は、半導体市況の回復だけではありません。背景には、AIデータセンターへの投資拡大を受け、メモリや半導体製造装置、パッケージング、検査、素材に至るまで、半導体サプライチェーン全体が新たに評価されはじめたことがあります。そうした流れが「ニューノーマル」として定着し始め、その期待が株価に織り込まれ始めたのです。
ここで、この流れを少し違う視点から見ると、今、市場が期待しているのは、単にメモリ価格が上昇し、半導体企業の業績が改善するというだけの話ではありません。AIサービスが増えるほど、それを支えるデータセンターの需要も拡大します。データセンターを構築するためにはGPUやメモリ、ストレージに加え、電力設備や冷却システムなどのインフラも併せて整備が必要になります。つまり、AI産業の成長に伴い、投資資金の向かう先はチャットボットや画像生成といったエンドユーザー向けのサービスだけでなく、それらを支えるインフラ全体へと広がっています。半導体企業だけでなく、製造装置・素材メーカーやデータセンター関連企業の株価が急騰している理由も、まさにここにあります。
この投資の波は、まだ上場していないAI半導体やAIインフラのスタートアップにも押し寄せています。それを裏付けるのが、AI・半導体・バイオなど先端戦略産業の育成を目指す政府主導の政策ファンド「国民成長ファンド」の動きです。同ファンドは最近、Upstage (アップステージ)、Rebellions(リベリオン)、FuriosaAI(フュリオサエイアイ)の3社へ大規模投資を行うことを決定しました。この過程で、Upstageには5,600億ウォン、Rebellionsには2,500億ウォン、FuriosaAIには8,000億ウォンの投資資金がそれぞれ投入されたとみられています。

これらの政府によって選定された企業も、チャットボットやアプリケーションのように消費者が実際に利用できるフロントエンドの領域ではありませんでした。Upstageは独自のAIモデルを、RebellionsとFuriosaAIはAI演算に必要な半導体を開発する企業です。この投資動向は、韓国のAI産業戦略が、技術やインフラ、データを自国で管理・統制する「Sovereign AI(ソブリンAI)」の構築を明確に見据えていることを物語っています。
もちろん、すべての国がNVIDIAやオープンAIのような企業を自分で作ることはできません。また、バリューチェーンのすべての段階を100%国産化するのも現実的に難しいです。しかし、最小限のインフラ開発さえ行わず海外ビッグテックに依存してしまうと、産業の主導権を確保することが難しくなることは明白です。そのため、多くの国が自国の半導体産業を育成する方向へと転換しているのかもしれません。また、この過程で新しいユニコーンスタートアップで跳躍の機会をつくることもできるかもしれません。
過去の葛藤を超えて未来に向けた協力を

ここで興味深いのは、韓国企業が日本の半導体サプライチェーンと再び手を組もうとしていることです。2019年7月、日本経済産業省は半導体やディスプレイ製造の核心素材における輸出管理を厳格化し、韓国を輸出手続きの簡素化対象国(旧ホワイト国)から除外しました。当時はこの半導体分野を発端として、日韓の協力関係が急速に冷え込んだ時期がありました。
しかし、興味深いのは7年が過ぎた今、両国が再び積極的に協力関係の強化に動いているという点です。単なる関係修復ではなく、AI半導体時代という新たなニーズにより、より深いレベルの協力が必要となっていることが伺えます。
2019年の対立は、逆説的にも、両国の半導体産業が完全に独立して存在できないことを証明する事件だったのです。韓国が素材の国産化を実現したとしても、最も厳しい最先端の工程では依然として日本の精密素材と設備が必要です。同時に、日本の半導体「ソブジャン(素材・部品・装置)」企業も韓国のメモリ製造企業の大規模な需要がなければ、収益性を維持できません。結局、日本と韓国は半導体という一つのエコシステムの中で互いに欠かせない関係にほかなりません。
これが、まさにAI半導体時代が日韓協力の必要性を高め、緊密になっている要因です。AIデータセンターの拡散速度が速いほど、HBM4などメモリ半導体の需要も大きくなるからです。
この結びつきの強さを如実に示しているのが、韓国の両半導体企業における2026年第1四半期の業績です。
SKハイニックスは売上52兆5,763億ウォン、営業利益37兆6,103億ウォンを記録し、創設以来最高となる実績を達成しました。特に営業利益率は、72%という驚異的な数値を叩き出しています。
また、サムスン電子は営業利益57兆2,328億ウォンと、四半期の実績としては歴代最大を更新。そのうち、半導体部門の営業利益が53兆7,000億ウォンと、大半を占めました。

日本のKIOXIAでも同じ現象が起こっています。
2025年度のKIOXIAの業績を見ると、売上は2兆3,376億円、営業利益は8,762億円を記録しました。これは前年比で売上が37%増、営業利益にいたってはなんと93.4%増という驚異的な伸びでした。
驚くべきは、その後のパフォーマンスです。KIOXIAが発表した2027年度第1四半期の業績予想では、営業利益が1兆2,980億円となり、前年同期比約29倍という爆発的な成長が見込まれています。これは、AIデータセンター向けNANDフラッシュ需要の急増がもたらした、直接的な成果と言えます。
さらに、2026年6月15日基準のKIOXIAの時価総額は約49兆9650億円を記録。トヨタ自動車を越えて日本企業1位に躍り出ました。市場では、KIOXIAの純利益がトヨタ自動車を上回るのではないかという分析もされています。
興味深いのは、SKハイニックスが2018年当時コンソーシアムを通じて3兆9,100億ウォンを投資し、KIOXIAの持分約19%を確保していた点です。当時、この投資は競合他社への膨大な資本投入だったので、やや異例の動きとして映りました。しかし、2024年12月のKIOXIA上場を経て、両企業は高帯域幅メモリ(HBM)とNANDフラッシュメモリという二つの分野で、それぞれ圧倒的な実績を収めています。
次世代半導体標準、日韓の中小企業が共に作りあげる

その過程で韓国と日本の「ソブジャン」企業は互いに市場のプレイヤーでありライバルとして存在しながらも、AI半導体時代の到来により、単なる製品の供給にとどまらず、次世代の技術標準そのものを共に策定する段階へと進んでいます。
韓国のQualitas Semiconductor(クオリタス半導体)と日本の浜松ホトニクス、韓国のIntekplus(インテックプラス)と日本のPicoNet(ピコネット)のように、両国の中小企業がまるでオーケストラのように各自の強みを持ち寄り、新たなCPO(光電融合)技術標準を共に作り上げているのです。これは他の国ではなく、日本と韓国だから実現できる強みだと捉えています。
2019年の日本による輸出制限措置は、日韓の半導体産業において苦い記憶でした。しかし、AIによる半導体超好況期を迎えた今、AIバリューチェーンの中で解決しなければならない課題(発熱、電力供給、効率など)を、誰がより早く解決するのかが、今後を左右する分岐点となることが予想されます。そしてこの大きな時流を前に、日韓半導体エコシステムは過去を乗り越え、再びお互いを必要としています。
SKハイニックスがKIOXIA に投資し、日本と韓国の半導体「ソブジャン」企業が一堂に会して、新たな半導体技術標準開発のために協力すること。これらすべては、単なる「競争」だけでは説明しきれません。
過去に半導体で葛藤していた両国が、手を取り、半導体で一緒に成長する。それが、まさに今なのです。
