5月28日午前1時、デビューから約2年が経過したあるガールズグループの楽曲が、韓国の音楽ストリーミングサービス「Melon(メロン)」のTOP100に98位でランクインした。その後、6月9日には7位まで上昇し、グループ史上初めてトップ10入りを果たした。さらに6月下旬には自己最高となる5位まで浮上した。驚くべきことに、再浮上したのは新曲ではなく、2024年にリリースされ、長らくチャート圏外にあった曲だった。
この「逆走行(過去曲のチャートランクイン)」の出発点は、新しいミュージックビデオでも、音楽番組のステージでもなく、リーダーWONI (ウォニ)の個人YouTubeチャンネルだった。『RESCENE(リセンヌ)』の話だ。
通常、韓国のガールズグループは、楽曲とステージで知名度を高め、その勢いを生かして音楽バラエティや自主制作コンテンツへと活動の幅を広げる。あくまでも楽曲が入口であり、バラエティは出口だ。しかし、RESCENEではその矢印が逆転した。デビューの順番まで逆転したという意味ではない。楽曲は2024年にすでにリリースされていた。ただ、静かだった。逆転したのは、人々との最初の接点だった。コンテンツが人々を先に集め、その関心が楽曲へと波及したのだ。
時系列で整理すると、その流れが見えてくる。WONIのYouTubeチャンネルの最初の動画は今年2月に公開された。4月から5月にかけてメンバーが順番に出演し、再生回数が急増した。動画内では、日本人メンバーがギャル風の挨拶と、あるメンバーの出身地である巨済市(コジェ市)の地名を組み合わせた「コジェヤッホー(거제 야호)」というフレーズを披露し、これがSNSで拡散された。そして5月22日には、グループが巨済市の広報大使に任命された。オンラインで生まれた話題が、公的な役割につながった象徴的な出来事だった。その流れの中で、楽曲は前述のとおりチャートに再ランクインした。チャンネル登録者数は6月1日に59万人を超え、グループ公式チャンネル(47万人)を上回った。その後も増加を続け、6月中旬に70万人、6月下旬には100万人を突破した。開設からわずか約4か月での記録だった。個人チャンネルから始まった話題がグループ全体へ広がったことを示すように、公式チャンネルの登録者数も6月27日時点で約60万人まで増加した。だが、この順序がそのまま因果を意味するわけではない。それぞれの段階がなぜ機能したのかは個別に検証する必要がある。
まず注目すべきは、リーチが生み出された方法だ。
今回の知名度上昇は、広告によって露出を増やした結果ではなく、視聴者が「面白い」と感じ、自発的に共有したことから始まった。人々が自ら拡散することでリーチが広がり、「誰かが選んで勧めたコンテンツ」という社会的な後押しも生まれた。
SNSで見知らぬ人が共有したコンテンツは、知人からのおすすめと同等とは言えない。しかし、広告ではなく「人を介して届く情報」であるという点では共通している。広告よりも知人からのおすすめを信頼する傾向は古くから知られており、2012年にNielsenが公表した調査でも、知人からのおすすめは、あらゆる広告媒体よりも高い信頼を集めるという結果が示されていた。
もちろん、人を介して情報が広がる状況を生み出すにもコストはかかる。それが広告費ではないだけで、企画・撮影・編集には相応の時間と労力が必要だ。それでも方向性は明確である。予算が限られるほど、高額な広告枠を買うよりも、人々が自ら広めたくなる場面を設計する方が効果的だ。
リーチの経路と並んで重要なのは、その経路を通じて何が拡散されるかである。何が人々の共有行動を促すのかを分析したマーケティング研究では、拡散を左右するのは感情の正負だけではないと指摘されている。驚きや感動、楽しさのように気持ちを高揚させる感情、あるいは怒りや不安のように神経を刺激する感情など、覚醒度(感情を強く揺さぶる度合い)の高い感情ほど共有を促しやすいとされている。
その点、「コジェヤッホー」は、思わず笑って一緒に叫びたくなるような、覚醒度の高いフレーズだった。さらに地名が入っているこのフレーズは、日常の中で「巨済」という言葉を目にするたびに、自然と思い起こされることとなった。
もちろん、この理論がすべてのK-POPのショートフォーム動画に当てはまるとは限らない。しかし、話題づくりを狙うのであれば、感情がポジティブかネガティブかだけでなく、人々が思わず反応し、真似したくなるような「覚醒度」を意識するという仮説は、ある程度通用するのではないか。
一度話題になっただけで終わっていれば、ありふれたミームと変わらなかっただろう。RESCENEが異なった点は、話題が単発で終わらず連続したストーリーだったことにある。一人のメンバーから始まったチャンネルには、他のメンバーが順番に登場した。まだ登場していないメンバーが次の回への期待を支えた。ファンたちは未登場のメンバーをジョークで「練習生」と呼び、ついに画面に現れると「デビューした」と歓迎した。単発のミームは、一時的に流行してもブームは長続きしないが、次の展開を期待させる構造は、人々の関心をつなぎ止め、繰り返し足を運ばせる。完成したプロモーション素材を一度にすべて公開するのではなく、キャラクターやメンバー同士の関係性が回を追うごとに明らかになっていく、連載型の物語に近かった。
その物語を最後まで追いかけさせた力は、加工されていない親密感だった。ある視聴者は「あなたたちが私にとっての『韓国人の食卓(한국인의 밥상)』であり『人間劇場(인간극장)』(※韓国の教養・ドキュメンタリー系長寿番組)」というコメントを残した。作り込まれたミュージックビデオや完ぺきなパフォーマンスからは得られない、自然な親しみやすさがむしろ資産になった。
コミュニケーション学者たちは、画面の中の人物に対して、一方的でありながら実際の人間関係のような親密さを感じる現象を「パラソーシャル関係」と呼ぶ。このチャンネルではクオリティの高さではなく、メンバーの個性や関係性を素に近い形で見られることがパラソーシャル関係を生んだようだ。創業者が率直につづった荒削りな文章が、洗練されたブランドコンテンツよりも反響を呼ぶケースに似ている。
ここで、生じうる反論にも目を向けたい。例えば、「そもそも楽曲自体が良かったのではないか」という意見だ。
今回チャートを逆走した『LOVE ATTACK』は、リリースされた年に英国NMEの「2024年ベストK-POP 25曲」に選ばれている。また、収録アルバム『SCENEDROME』は米ビルボードで2024年ベストK-POPアルバムリストに掲載された。つまり、YouTubeチャンネルでのコンテンツは、なかった価値を生み出したのではなく、過小評価されていた価値を可視化したのだ。
チャートの逆走も決して新しい現象ではない。過去には、EXIDやBrave Girls(ブレイブガールズ)などの楽曲でも発生したことがある。ただ、前例の起爆剤が過去ステージ映像の再発見だったとすれば、今回は継続的に稼働するコンテンツチャネルが流れの軸だった。
一方で、話題になっただけでチャートが上昇するわけではないという点も忘れてはならない。チャートへの再ランクインには、既存ファンダムによる後押しも作用した可能性がある。しかし、話題が実際の試聴につながり順位が維持されるためには、土台としての楽曲そのものの競争力は不可欠だった。何より私たちは成功した一つの事例だけを目にしている。過去に同じ手法を試みて、成功しなかった事例は数多く存在するものの、私たちの目に触れることはほとんどない。今回のブームは、そっくりそのまま真似できる方程式ではなく、成功したケースに共通して見られた条件を集めただけにすぎない。
この話はアイドルだけに通用するものではない。
良いものを作りながらも、最終的に誰の目にも触れることなく忘れられることは珍しくない。海外の評論家がいち早く認めた楽曲でさえ、長い間一般チャートの外にとどまっていた。RESCENEが示したのは、人々の目に届く道をどのように切り開くかだった。その道が実際の試聴までつながったのは、支えとなる楽曲があったからだ。発見は、良い製品を作れば自然と得られるものではない。別途設計しなければならない独立した作業なのだ。
『RESCENE』というグループ名は、「Scene(シーン)」と「Scent(香り)」に由来する。香りが忘れていた記憶を呼び起こすという、プルーストの古くからの着想を音楽で表現しようという思いが込められている。ところが皮肉にも、大衆が最初に感じ取ったのは、その香りではなく「シーン」だった。そして、そのシーンが忘れられていた楽曲を呼び戻した。
<画像=ガールズグループRESCENE(リセンヌ)のリーダー、ウォニの個人YouTubeチャネル「안녕하세요원이입니다잘부탁드립니다」(http://www.youtube.com/@helloiamwoninicetomeetyou)>
原文:https://platum.kr/archives/289673
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