2日、虎ノ門ヒルズで新韓金融グループによる日韓スタートアップ・投資会社・支援機関交流会である「Shinhan Future’s Lab Japan 2022 Forum」が開催された。

これは新韓金融グループのスタートアップ育成拠点であるShinhan Future’s Labの日本拠点「Shinhan Future’s Lab Japan」の発足に先だって行われたイベント。Shinhan Future’s Lab Japanは、2016年のベトナム、2019年のインドネシアに続き、3つ目の海外拠点となる。

この日、イベントでは支援機関、スタートアップ、日本の大企業/支援機関、VCの4つのセッションに分け、発表及びパネルディスカッションが行われた。また後半には韓国スタートアップ10社によるピッチ、ネットワーキングタイムが設けられた。

セッション1では、KOTRA(大韓貿易投資振興公社)の投資誘致チーム長であるイム・ジフン氏、現代自動車ZERO1NEのシニアマネージャーであるオ・ウォンテク氏、D・CAMPのキム・ヨンドク代表の順に登壇し、各機関で行っている支援事業を紹介し、韓国スタートアップの日本進出について期待感のある言葉を残した。

KOTRAのイム・ジフン氏は、2021年から本格スタートしたオープンイノベーション事業について共有し「単に企業にスタートアップを紹介するに留まらず、企業とスタートアップの相互の目的やニーズを確認し、しっかりとした協業を促すことを目的としている」と述べた。

D・CAMPのキム・ヨンドク代表は、「革新的なスタートアップがたくさん出てきて、とても活発になっている。今回のShinhan Future’s Labの発足や、こういったイベントの機会によってさらに(スタートアップエコシステムが)活性化していくのだと思う」と述べた。

また発表後に行われたパネルディスカッションでは、モデレーターをUNI Platformのキム・ユンギョン代表が務め、「韓国のスタートアップが日本に進出する理由は?」という問いが投げかけられた。現代自動車のオ・ウォンテク氏は、「物流分野などは東南アジアを目指し、IT・半導体などの素材企業はまず日本を考える」と述べた。

D・CAMPのキム・ヨンドク代表は、日韓のスタートアップの交流が増えるべきだと述べ、「韓国は早く行うこと、急ぐ特徴があり、日本は着実に行うという特徴がある。(両国が異なる面を持つので)補完的に作用し、シナジー効果を出せるのではないか」と述べた。

セッション2では、既に日本進出にしている韓国のスタートアップ2社、韓国No.1美容医療情報アプリであるカンナムオンニを提供するHealingpaperの日本共同代表を務めるイム・ヒョングン氏と、地域限定の中古取引アプリサービスDanggeun Market(グローバルサービス:Karrot(キャロット))の日本法人長であるチョン・ヨンチョル氏が登壇した。日本市場の特徴や、日本進出の際に留意すべき点などについて共有した。

イム・ヒョングン氏は、カンナムオンニの日本進出時には核心的な業務に集中して進出を進めてきたと述べ、日本国内での採用や、口座開設の難しさを強調した。

チョン・ヨンチョル氏は、自社のサービスについて、地域に集中している点が特徴であることを挙げ、「韓国で培ったものを海外でもやってみようと思った」と述べ、なぜ日本を進出先として選んだのかについては、「(Karrotは)近所とのやりとりが必要なため都市化されていることが必要」だったとし、「(日本と韓国は)地理的に近い」など多様なメリットが存在すると明かした。

セッション3では、日本の企業、支援機関から渋谷区の産業観光部グローバル拠点都市推進室の室長を務める田坂克郎氏、みずほ銀行イノベーション企業支援部部長の金田真人氏、きらぼし銀行、FINOLABが登壇した。各企業、機関が自社で行っているスタートアップ支援の取り組みについて共有をした。

セッション最後のパネルディスカッションでモデレーターを務めたPlag and Play Japanマネージャーの伊藤啓太氏が「どういった海外スタートアップが日本に来てほしいか?」という問いを投げかけた。FINOLABの伊藤千恵代表は、「日本の市場にインパクトを与えられるようなスタートアップ」とし、「日本のスタートアップも刺激をもらえるので相互効果があるのではないか」と話した。金田氏は、「見たことないビジネスモデルを期待している」と述べた。

セッション4ではベンチャーキャピタルであるPKSHA Capitalのゼネラルパートナーである海老原氏と、Global Brain投資グループプリンシパルのチャン・ヒョクジン氏が登壇し、韓国スタートアップの資金調達動向、イグジット動向などを共有。

パネルディスカッションでは、「日本ではAI、韓国ではコンシューマーテックが盛んだが、分野の違いについてどういう理由があるか」という議題に対し、チャン・ヒョクジン氏は「韓国はスマホを経由したコンシューマーテックの成功事例が早い段階で出てきたこと」が韓国内で中心的な分野になったのではないかと述べ、「日本は注目しているところが異なっている。日常よりは人類レベルでなにかできないかという観点があり、その手段としてAIが注目されている」と話した。

海老原氏は「日本はB2Bが盛り上がっている」とし、「(日本は)B2Cはデジタル化されていて、ベンチャー系が担っており、それ以外は大企業(が担っている)」といった構造的な違いを指摘した。

また、「日韓のスタートアップが力を合わせて何かできることがあるか」という議題ではチャン・ヒョクジン氏は「(日韓で)盛り上がっている領域が違うので補完しあえる」と話し、海老原氏は「(日韓スタートアップの協業の部分を)我々も取り組んでいきたいと思っている」とし、協業には様々な可能性があることを述べ「間を繋ぐ人がいないのでそういった方たちがでてくれれば」と述べた。

この日参加したスタートアップ10社は、

  • Mathpresso:人工知能問題解説検索サービス Qandaを提供(ヘルスケア)
  • Deepbrain AI:AI映像合成専門企業(AI)
  • Homes Company:韓国初のコリビングサービスを提供(不動産)
  • BLOCKO:B2Bブロックチェーン専門 MSPを提供(ブロックチェーン)
  • Social Investing Lab:株取引SNSプラットフォーム coffee houseを運営(フィンテック)
  • Moin:海外送金サービスを提供する(フィンテック)
  • Mobidoo:ワンストップで搭載可能なライブコマースソリューションを提供(ライブコマース)
  • WRIGHTBROTHERS:自転車専門バーティカルプラットフォーム(自転車)
  • Poled:プレミアムベビー用品ブランド(B2C)
  • Atommerce:匿名基盤の心理相談治療プラットフォームMINDCAFEを運営(ヘルスケア)

KORITはこの日、イベントが行われている裏で日韓スタートアップエコシステムの中心となるキーパーソンたちにインタビューを行いました!随時更新されるのでチェックしてみてください!