目次
💡このレポートから得られる3つのインサイト
規制の変化:新型コロナウイルスや医政対立を経て、オンライン診療が「一時的な特例措置」から法的制度として定着するまでの過程を理解できます。法制度をめぐる最新動向:プラットフォームによる医薬品流通をめぐる「ドクターナウ防止法」など、医療界と業界の対立構図の核心を理解できます。主要オンライン診療スタートアップ:規制変動のなかで利用者数を急増させた主要スタートアップの成長プロセスを確認できます。
1.オンライン診療規制の歩みと最新の論点
「ドクターナウ防止法」について聞いたことはありますか。名称からして印象的ですが、これは現在国会で審議中の薬事法改正案を指す通称です。オンライン診療スタートアップとして知られるdr.now(ドクターナウ)の事業を阻止するための法律なのでしょうか。それとも、オンライン診療そのものが違法化されるという意味なのでしょうか。ここでは、オンライン診療をめぐる規制の流れと現状について整理します。
現在、韓国でのオンライン診療とは、患者が医療従事者と直接顔を合わせることなく、アプリを通じて医師の診察や相談、処方を受け、薬局から薬を受け取るまでの一連の流れを指します。患者が医師と対面せずに診断や処方を受けることは、事実上違法とされてきました。しかし数年前から、dr.now(ドクターナウ)、goodoc(グッドク)、soldoc(ソルドク)といった多様なオンライン診療プラットフォームが登場しています。では、これらの法的な根拠はいつ整えられたのでしょうか。

2020年2月以前、韓国では医師と患者の間で行われるオンライン診療は原則として禁止されており、医療法第34条に基づき、医療従事者同士の遠隔助言のみが認められていました。
しかし、2020年2月に新型コロナウイルスの危機警報レベルが「深刻」段階へと引き上げられたことで、状況は急変します。2020年2月23日、保健福祉部は医療法の改正ではなく、感染症予防法に基づき、電話による相談および処方を一時的に許可しました。この時点が、韓国でオンライン診療が公式に認められた出発点といえるでしょう。その後、約2年間にわたり暫定措置が続き、さまざまなオンライン診療プラットフォームが相次いで登場しました。
2023年6月1日、新型コロナウイルスの危機段階が引き下げられたことに伴い、感染症予防法に基づく一時的なオンライン診療の特例措置は終了しました。しかし、将来の有望な革新分野として成長してきたオンライン診療スタートアップをすべて違法とすることは難しい状況でした。そのため、保健医療基本法第44条に基づく「オンライン診療試験事業」がスタートします。こうしてオンライン診療は、例外的な特例措置ではなく、独立した試験制度として再出発することになります。試験事業には複数の制限が設けられました。運営は主に診療所級の医療機関に限定され、診療対象も再診患者が中心とされました。初診については極めて例外的な場合にのみ許容されました。試験事業として制度上は許容されたものの、こうした制約により、多くのオンライン診療スタートアップがサービスを中断する事例が相次ぎました。これを受けて12月15日には、再診基準の緩和や、夜間・休日には診療履歴がなくても初診のオンライン診療を認めるなど、試験事業の主要内容が見直されました。
2024年2月23日、医学部定員の拡大をめぐる医政対立が極限まで激化し、医師による集団行動の影響で医療の空白が深刻化しました。これを受けて政府は、保健医療危機警報の「深刻」段階を宣言し、オンライン診療試験事業の指針を改定しました。すべての種別の医療機関(病院級医療機関を含む)でオンライン診療を可能としたほか、オンライン診療の実施割合も緩和するなど、大幅な規制緩和が実施されました。この措置は、2025年10月に保健医療危機警報の「深刻」段階が解除されるまで継続され、オンライン診療が大幅に拡大する契機となりました。実際、2024年末には肥満治療薬(ウゴービ)をオンライン診療で処方・受領するケースが急増し、それに伴い肥満治療薬の処方制限措置が取られる事態も生じました。2025年10月、危機警報の解除とともに試験事業の許容範囲は再び縮小されましたが、その代わりに医療法改正による本格的な法制化を目指す動きが始まりました。

〈左〉医学部定員拡大をめぐる医政対立のデモ/朝鮮日報、〈右〉ウゴービを処方するオンライン診療アプリの画面/韓国日報
こうした動きを受け、2025年12月2日、国会本会議においてオンライン診療の制度化を目的とする「医療法」改正案が可決されました。改正案には4つの基本原則が反映されています。対面診療を原則とすること、診療所級医療機関を中心とすること、再診患者を中心とすること、そしてオンライン診療を専業とする機関を認めないことです。補完的手段としての位置づけにとどまるという限界はあるものの、オンライン診療は法的根拠を持つ事業として正式に認められることになりました。

2025年12月2日 医療法一部改正案 国会本会議通過 / 医療新聞
実際に、韓国を代表するオンライン診療プラットフォーム企業dr.nowのMUV(月間ユニーク訪問者数)の推移から、法規制の動向と連動して成長していることが分かります。2024年以降、同社のMUVは急速な上昇カーブを描き、200万人規模にまで達しています。

では、オンライン診療が法制化された2026年1月になぜ「ドクターナウ防止法」が論争となっているのでしょうか。
論争の焦点は、診療そのものではなく、診療後に処方箋を薬局へ送信するプロセスにあります。ドクターナウが患者向けに薬局情報を表示する際、子会社「ビジン薬品」から医薬品を購入している薬局を中心に上位表示しているとの指摘が出ているためです。実際、ドクターナウと提携している薬局は現在3,200店舗あり、そのうち約1,200店舗が同社の子会社から医薬品の供給を受けているとされています。
これは、coupang(クーパン)が自社PB商品を上位表示するのと同様の不公正取引に当たるのではないか、という点が主な争点となっています。

2024年末、国会には、オンライン診療プラットフォーム事業者による医薬品卸・小売業の兼営を禁止する内容の薬事法一部改正案が提出されました。この法案が、いわゆる「ドクターナウ防止法」として知られるようになりました。医薬品業界は、薬局サービスが巨大プラットフォームに取り込まれ、従属してしまう危険性を指摘しています。これに対し、スタートアップやベンチャー業界は、リベートや談合などの患者誘引行為はすでに事後規制が可能であるにもかかわらず、適法に許可された事業そのものを先制的に禁止するのは「第二のTADA(タダ{タクシー配車アプリ})禁止法」に当たるのではないかと反発しています。こうした議論の結果、昨年12月に医療法改正とあわせて可決される予定だった「ドクターナウ防止法」は成立に至りませんでした。

ドクターナウのチョン・ジンウン代表が10日、ソウル中区プレスセンターで開かれた「オンライン診療の未来:国民向け政策需要調査結果の発表および業界政策提言」をテーマとする2025遠隔医療産業協議会の記者懇談会で発言している様子。=聨合ニュース
2026年1月16日に予定されている国会本会議で、この法案は可決されるのでしょうか。オンライン診療はすでに法的な許可を得ていますが、プラットフォーム企業が医薬品の卸売・小売業を同時に営めるかどうかによって、業界の命運が分かれる状況です。その帰趨に関心が集まっています。
2.オンライン診療関連スタートアップ
※スタートアップの順序は韓国語の五十音順
1.goodoc(グッドク)
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【企業紹介】
オンライン診療プラットフォーム「goodoc」を運営
【最近の資金調達】
投資段階と調達額:シリーズA、210億ウォン(約23億円)
投資会社 :Samsung Venture Investment(サムスンベンチャー投資)、Magellan Technology Investment(マゼラン技術投資)、KB Investment(ケービーインベストメント)、IBK企業銀行、Dt& Investment(ディーティーアンドインベストメント)、Bokwang Investment(普光インベストメント、E&VENTURE PARTNERS(イーアンドベンチャーパートナーズ)T INVESTMENT(ティーインベストメント)、CARELABS(ケアラボ)

goodocの直近3カ年の主要成長指標
2.dr.now(ドクターナウ)
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【企業紹介】
オンラインを基盤とした診療および医薬品配送のO2Oプラットフォーム「dr.now」を運営する企業です。
【最近の資金調達】
投資段階と調達額:シリーズB非公開
投資会社 :DAYLI Partners(デイリーパートナーズ)、Mirae Asset(未来アセットキャピタル)、Smart Study Ventures(スマートスタディベンチャーズ)、CRIT Ventures(クリットベンチャーズ)、Primer Sazze Partners(プライマーサゼパートナーズ)、Hashed Ventures(ハッシュドベンチャーズ)

dr.nowの直近3カ年の主要成長指標
3.Merakiplace
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【企業紹介】
オンライン診療サービス「My Doctor(マイドクター)」を運営する企業です。
【最近の資金調達】
投資段階と調達額:プレシリーズA、62億ウォン(約7億円)
投資会社:BASS Ventures(ベースベンチャーズ)、KB Investment、LAGUNA INVESTMENT(ラグナインベストメント)、Cowell Investment Group(コウェルインベストメントグループ)、Tale(テール)、Goodwater Capital(グッドウォーターキャピタル)、SpringCamp(スプリングキャンプ)、Fast Ventures(ファストベンチャーズ)

Merakiplaceの直近3カ年の主要成長指標
4.soldoc(ソルドク)
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【企業紹介】
オンライン診療およびパーソナライズド医薬品コマースプラットフォーム「soldoc」を運営する企業です。
【最近の資金調達】
投資段階と調達額:シリーズB、50億ウォン(約5億円)
投資会社:Hanwha Investment(ハンファ投資証券)、HLB Investment(エイチエルビー インベストメント)、Quantum Ventures Korea(クォンタムベンチャーズコリア)、XPLOR INVESTMENT(エクスプロアインベストメント)

soldocの直近3カ年の主要成長指標
原文:https://www.innoforest.co.kr/report/NS00000445
革新の森:https://www.innoforest.co.kr/
マークアンドカンパニー:https://markncompany.co.kr/
