養豚産業は急速に大規模化してきましたが、その管理は今もなお人の目や感覚に大きく頼っています。何千頭もの豚が一日中動き、食べ、成長していくなかで、体重や摂食量、活動量、咳といった変化は現場で見過ごされがちです。記録として残らなければ原因の追跡は難しく、異常の兆候に気づくのが遅れた瞬間、損失は一気に拡大します。畜産の課題は技術の不足ではなく、「観察された情報が意思決定に結びつかないこと」にあります。

Intflow(イントフロー、代表チョン・グァンミョン)は、このギャップを「見せるためのスマートファーム」ではなく、現場で機能するAIとして埋めようとしています。彼らが問いかけたのは「AIが実現できるかどうか」ではなく、「農家の一日を少しでも安心なものにするために、まず何を測るべきか」という点でした。そのため、目指しているのは見た目の良いダッシュボードの構築ではなく、農家がより早く正確に判断できる基準をつくることにあります。この哲学は製品構造にも明確に反映されています。畜舎では通信環境が不安定になりやすく、データをすべてクラウドに送るとコストと運用負担が増大します。そこで同社は、カメラやIoT機器で収集したデータを現場で直接分析するオンデバイス(エッジ)AIを採用し、リアルタイムでの管理効率を高めました。

最近、Intflowは、技術の高度化にとどまらず、商用化と普及に向けた連携も広げています。農村振興庁・国立畜産科学院とは、映像や音声を活用した異常行動検知技術の実証を進めるとともに、農家への普及段階を見据えた協力を行っています。さらに、Samsung Welstory(サムスン・ウェルストーリー)のオープンイノベーションプログラムにも参加し、現場での実用性とビジネス拡大の接点づくりを進めています。

Intflowロゴ

今回のインタビューでは、チョン・グァンミョン代表に、なぜ畜産の本質を「AI技術」ではなく「観察と意思決定のシステム」と捉えたのか、研究者発のスタートアップが現場で使われる製品へと形を変えていく過程で何が最も難しかったのか、そして官民連携やオープンイノベーションの経験を踏まえ、Intflowが次の段階でどのような成長戦略を描いているのかを聞きました。

AIパートナーシップデーで発表を行っているチョン・グァンミョン代表

目次

簡単な自己紹介と、起業前のご経歴について教えてください。

こんにちは。Intflow代表のチョン・グァンミョンです。当社は2019年8月に創業し、今年で7年目を迎えました。養豚場を中心に、カメラやセンサーを活用して豚の成長状態や健康異常の兆候を非接触で測定・分析するAIソリューションを開発しています。これにより、農家の方々がより安定的で予測可能な形で経営できるよう支援しています。

起業前は、一般的な企業でのキャリアというより、研究活動を中心に経験を積んできました。光州科学技術院(GIST)でコンピュータサイエンスを専攻し、修士・博士課程ではAI研究や産学連携プロジェクトに取り組んできました。学生ではありましたが、実際の産業現場で求められる課題の定義から、データ収集、モデル開発、性能検証まで一連のプロセスを深く経験し、その積み重ねが現在のIntflowの技術や製品の基盤になっています。

博士課程を修了する頃には、「研究成果を論文にとどめるのではなく、現場で使われ続ける形にしたい」という思いが強くなっていました。そのため、卒業と同時に起業を決意しました。畜産を選んだ理由は、単に「技術的に魅力的だったから」ではなく、測定が難しく改善のスピードが遅れがちな産業だったからです。この「見えない領域」をデータとAIでつなぐことができれば、運営のあり方そのものを変えられる——その確信が、Intflowの出発点でした。

起業に至った決定的なきっかけと、当時感じていた課題について教えてください。

最初から畜産分野に取り組もうと考えていたわけではありません。創業初期は、AIやビジョン技術を、規制が比較的少なく現場ですぐに導入できる分野に適用し、実際の成果を確認していきたいという思いがありました。そうした中で、知人の紹介をきっかけに養豚場を訪れる機会があり、そこで目にした光景がその後の方向性を決定づけました。

農場自体はすでに産業レベルまで大規模化していた一方で、管理の方法は想像以上にアナログでした。数千頭の豚のうち一部だけをサンプリングして体重を推定し、飼料の摂取量や活動量、咳といった異常の兆候も、多くは人の目で確認して判断していました。問題は、こうして得られた情報がデータとして蓄積されないため、トラブルが発生しても原因を正確に追跡できず、対応が遅れるほど損失が大きくなる点にありました。私が感じたのは、畜産が遅れているというよりも、観察と判断のあいだに「測定できる基準」が存在していないということでした。

もう一つの課題は、人手と持続可能性の問題でした。養豚産業では高齢化と人手不足が急速に進み、疾病リスクや環境規制、コスト上昇の圧力も年々強まっています。このような環境で「人がより注意深く見ることで対応する」という方法は、長くは続きません。だからこそ、人の常駐に依存せず、24時間の観察と早期の異常検知が可能な仕組みが必要だと考えました。

そうした中で、自分の得意技術である、カメラ映像から個体を識別・追跡し、行動パターンや異常兆候をモデル化する技術が、この課題に自然と結びつくと感じました。Intflowは、単に技術を活かすために産業を選んだのではなく、現場で繰り返される損失や不確実性を減らすために、AIを実際に使える形で適用することを目的に立ち上げた会社です。

社名「Intflow」に込められた意味や哲学は何ですか。

Intflowには、AI技術を社会や日常の中に自然に広げていくという意味を込めています。私が畜産の現場で感じたのは、「データが存在しない」というよりも、「データが活かされていない」という課題でした。カメラ映像や給餌の記録、人の観察など、さまざまな情報は存在しているものの、それぞれが分断されたままで、次の判断につながらない状態が続いていたのです。その結果、運営は経験に頼らざるを得ず、同じ問題が繰り返され、損失が積み重なっていく構造になっていました。

だからこそ私たちが目指したのは、「スマートファーム」という言葉にとどまるものではなく、観察→解釈→意思決定→改善へとつながる一連の流れそのものです。例えば、体重の変化や摂食時間、活動量、咳といった情報は、単なる数値として記録されるだけでなく、「では今日何を確認すべきか」という具体的な判断につながる必要があります。Intflowという名前には、この流れが途中で途切れないようにするという意志が込められています。

「Flow」には、私たちの運営に対する考え方も込められています。畜産は一度の取り組みで劇的に変わるものではなく、日々の運営が少しずつ改善されていくことで全体が良くなっていくものだと考えています。そのためには、データが単発のレポートで終わるのではなく、現場で継続的に蓄積され、比較され、再び改善に活かされるという循環の仕組みが必要です。「Intflow」という名前には、その循環を支える基盤をつくるという意味も込めています。

この「流れ」という考え方は、技術の選び方にも影響します。畜舎ではインターネットが不安定になりやすく、すべてのデータを外部に送る方法はコストや運用の負担が大きくなります。そこで私たちは、できるだけ現場でデータを分析し、本当に必要な情報だけを残して運用に活かすオンデバイス(エッジ)方式を採用しています。つまりこの社名には、「データが途切れずに流れる仕組みを現場で実際に機能させる」という私たちの考え方がそのまま表れています。

Intflowの事業内容と、主力製品「エッジファーム」についてご紹介ください。

当社の事業を一言で表すと、「カメラやセンサーを使って畜産現場を24時間観察し、その結果を農家の意思決定につなげるオンデバイス(エッジ)AIソリューション」です。現在は特に養豚場を中心に、非接触で個体を認識・追跡し、体重や摂食、活動量、異常行動といった重要な指標を自動で測定することで、農場運営の精度向上に取り組んでいます。

エッジファームを通じて畜舎を監視する画面

その中核となる製品が「エッジファーム(edgefarm)」です。エッジファームは、畜舎に設置したカメラやIoT機器から取得したデータを、現場で即時に分析する仕組みを備えています。畜舎ではインターネット接続が不安定な場合も多く、すべての映像をクラウドに送って処理するとコストや運用負担が大きくなります。そのため、「現場で完結するAI」を重視して設計しました。農家はウェブのダッシュボードを通じて豚の状態を一目で把握でき、異常が疑われる個体やエリアを素早く特定することができます。

Intflowの主力製品「エッジファーム」– 非接触型の家畜健康管理ソリューション

エッジファームは、大きく二つの機能で構成されています。ひとつは「カウント(Count) 」機能で、豚の移動データをもとに頭数や体重を自動的に記録し、手書きの記録や手動での計測に代わるものです。これにより、日常的に発生する反復作業の負担を大きく軽減できます。もうひとつは「グロウ(Grow)」機能で、個体やグループごとの成長の流れを継続的に追跡し、体重の変化や摂食時間、活動量といった指標を可視化します。これによって、出荷のタイミング判断や疾病の兆候を早期に捉えることが可能になります。農家にとっては、「どの区画に異常があるのか」「どの豚舎の成長が遅れているのか」を、感覚ではなくデータで把握できるようになります。

私たちが目指しているのは、単に「AIを導入すること」ではありません。農場の運営が日々少しずつ改善されていくように、観察・警告・改善が繰り返される仕組みをつくることです。エッジファームは、その仕組みを現場で実現するためのプラットフォームであり、私たちの事業も、このプラットフォームを韓国内外の畜産現場へ広げていくことに軸を置いています。

「AIを活用した家畜ヘルスケアソリューション」という分野において、貴社が目指すミッションとビジョンは何ですか。

私たちが考える「AI基盤の家畜ヘルスケア」の本質は、家畜を病院のように診断する技術をつくることではなく、農場運営のあり方そのものを「事後対応」から「予防中心」へと転換することにあります。現在の畜産現場では、問題が発生してから初めて異常に気づくケースが多く、その時点ではすでに一定の損失が生じていることが少なくありません。Intflowのミッションは一文で表すと、「家畜の状態を24時間非接触で測定し、農家がより早く異常を発見し、より正確に判断できるよう支援すること」です。私たちは、健康管理とは単なる技術の問題ではなく、「どれだけ早く異常に気づけるか」「どのような基準で判断できるか」を変えることだと考えています。

ビジョンは、より長期的な視点で描いています。私たちは、畜産業が将来的に「データに基づく生体管理産業」へと転換していくべきだと考えています。これまで人の熟練や経験に依存してきた管理から脱却し、個体や群れの成長や異常の兆候が標準化された指標として記録され、そのデータが給餌や出荷、環境管理といった日々の意思決定に自然につながる仕組みを実現したいと考えています。このプロセスの中で、動物福祉やESGといった価値にも同時に対応できるようになります。早期発見と予防が可能になれば、不要なストレスや治療コストを減らし、農場の持続可能性と社会的な要請の双方を満たすことができるからです。

最終的に目指しているのは、エッジファームのような現場型ソリューションを通じて蓄積される膨大なデータをもとに、家畜の健康データ基盤の標準を構築することです。現在は養豚を中心に展開していますが、将来的にはさまざまな畜種や国へと広げ、「どの農場でも適用できる最低限の運営基準」を提供できる企業になることを目指しています。言い換えれば、Intflowのミッションが「今日の農家の不安を減らすこと」だとすれば、ビジョンは「これからの畜産の仕組みを再設計すること」です。

事業を進める中で、最も大きな課題や転機となった出来事は何でしたか。また、それをどのように乗り越えましたか。

私たちが最も強く感じた難しさは、意外にも「技術を完成させること」ではありませんでした。むしろ、完成した技術を現場で使ってもらうまでの「最初の説得」のプロセスが最大の課題でした。畜産業は基本的に変化に慎重な業界であり、私たちが価値があると考えるソリューションであっても、現場ではまず「今すぐ変える必要があるのか」という疑問が生まれます。無償で提供する場合でも導入に至らないことがあり、その中で、「技術が実現できること」と「現場で実際に使われること」はまったく別の次元の話だということを痛感しました。

そのため、この壁を乗り越えるためにさまざまな取り組みを重ねてきました。中でも重要だと感じたのは、単に説明を増やすことではなく、「試してみてもいい」と思えるだけの根拠を積み上げることでした。その根拠となったのがリファレンスの蓄積です。韓国だけだと「良さそうですね」という反応で止まってしまうことが多かったのですが、海外で規模の大きなパートナーとともにパイロット実証を進め、実績を積み上げていく中で、説得のスピードは明らかに変わっていきました。単に「理論的に可能な技術」ではなく、「すでに別の環境で実際に稼働している」という事実があることで、農家の方々が感じる不安やリスクは大きく下がります。もっとも、現在でもこの「最初の一歩」を踏み出してもらうことは、簡単な課題ではありません。

それでも、はっきりとした転機はありました。2025年を境に、有料で導入していただく農場が目に見えて増え、それまで比較的アプローチが難しかった一般の農家、いわばB2Cに近い顧客層に向けた広報やチャネル拡大にも本格的に取り組むようになりました。その結果、昨年からは販売面でも手応えのある成果が出始めています。つまり、「パイロットや実証中心の段階」から、「実際の購入と口コミによって広がる段階」へと移行する流れが、はっきりと見え始めたということです。

まとめると、私たちにとって最大の課題は技術開発そのものではなく、保守的な市場において「最初の導入」を実現することでした。その壁に対して、リファレンスを積み重ねて信頼を築きながら、接点を広げるチャネル戦略を並行して進めることで、少しずつ乗り越えてきていると感じています。

Intflowが取り組む、畜産業における最も本質的な課題は何ですか。

私が畜産現場で最も本質的だと考えている課題は、「技術が不足していること」ではありません。すでに規模は産業レベルまで拡大しているにもかかわらず、運営を客観的に捉えるための基準が不足している点にあります。養豚場では数千から数万頭の豚を同時に管理していますが、実際の意思決定は依然として経験や感覚、限られたサンプルに大きく依存しています。そのため問題が発生した際に、「なぜ起きたのか」をデータで説明することが難しく、説明できなければ同じ問題が形を変えて繰り返されてしまいます。結果として、損失は結果としてしか把握できず、原因を特定して改善するまでのスピードもどうしても遅くなってしまいます。

この問題は、情報が存在していても、それが「具体的な対応」に結びつかない構造の中でさらに大きくなります。現場にはカメラ映像や飼料の記録、管理者の観察といったさまざまな情報が蓄積されていますが、それらが一つの流れとして整理され、「では今日何をすべきか」という判断につながるケースは決して多くありません。例えば、体重が期待通りに増えていない場合でも、摂食・環境・疾病のどこに原因があるのかを見極めるには、継続的なデータと比較の基準が不可欠です。しかしその基盤が不足していると、「もう少し様子を見る」という判断に留まりがちです。その間にも問題は静かに進行し、こうした見えにくい損失が畜産業における大きなコストになっていると感じています。

この構造は、人手不足の問題と重なることで、さらに深刻になります。高齢化と人材不足が同時に進む中で、「人を増やして、より頻繁に目で確認する」というやり方は、もはや持続可能とは言えません。これから必要とされるのは、人手が減っても運営が成り立つ、予防を前提とした管理体制です。Intflowは、その実現に向けて、測定・比較・早期検知・優先順位づけといった最小限の判断基準を現場に定着させることに取り組んでいます。言い換えれば、私たちが解決しようとしているのは単なる「AIの導入」ではなく、畜産の運営そのものを、勘ではなくデータに基づいて回る構造へと変えていくことです。

外部に共有できる代表的な成功事例があれば教えてください。

外部にご紹介したい事例は、大きく3つあります。韓国内では、ダビ育種と忠南ポークビル、海外ではタイのCPFとのプロジェクトです。私たちにとっては、単に「成果が出た」ことではなく、異なる環境においても実際の運用価値が検証されたことが重要でした。

まずダビ育種の場合、種豚をベースに遺伝改良を行う現場であるため、個体管理の精度が特に求められます。このプロジェクトで意義深かったのは、単一農場での成果ではなく、15の農場ネットワークの中で「異なる農場でも同様の効果が得られるか」を確認できた点です。これは、エッジファームが単なるモニタリングツールではなく、複数の農場にまたがる運営基準を構築するツールとして機能し得ることを示した事例でした。

次にご紹介したいのは、忠南ポークビルの事例です。1日3,000頭規模で処理が行われる現場では、体重や頭数といったデータを感覚的に把握するのではなく、どれだけ正確に測定・記録できるかがコストに直結します。この事例から、エッジファームが農場内の管理だけでなく、と畜や流通を含めたバリューチェーン全体において、データドリブンな運営を可能にする基盤となり得ることが示されました。

海外では、タイのCPFとの協業が重要な節目となりました。タイ進出後、CPFとともに8カ所の農場で実証を行い、気候や施設条件が異なる環境でもエッジファームの有効性と運用性が確認されています。今後はタイ市場への取り組みを一層強化し、単なる輸出ではなく、現地に最適化した運用モデルを構築しながら、展開を進めていきたいと考えています。

Intflowが畜産農家に提供するソリューションの最大のメリットについて教えてください。

最大の価値は、農場の不確実性を減らし、限られた人員でも安定して予測可能な運営を行えるようにすることです。畜産では、コストや損失は飼料費、死亡率、出荷成績、人件費といった形で表れますが、それらを改善するためには、「問題が深刻化する前にどこで異変が起き始めたのか」を早期に把握することが不可欠です。Intflowのソリューションは、その見えにくい変化を、感覚ではなく可視化されたデータと記録として捉えられるようにします。

現場で感じられる変化は、大きく3つあります。

1つ目は、異常の早期発見が可能になることです。体重・摂食量・活動量・咳といった指標は、問題が深刻化する前に変化が現れます。こうした兆候を自動で捉えられるようになることで、対応のタイミングを前倒しできるようになります。その結果、疾病の発生や成長の停滞が大きなトラブルへと発展する前に対処できる余地が大きく広がります。

2つ目は、繰り返し作業の削減です。頭数の把握や体重測定など、時間を要する作業が自動化されることで、現場スタッフは単純作業から解放され、「どの対応を取るべきか」という判断により多くの時間を使えるようになります。人材不足が進む中で、この変化は運営効率だけでなく、体感的な負担の軽減にもつながります。

3つ目は、判断基準がぶれにくくなる点です。データが蓄積されることで、正常と異常を見極める基準が個人の感覚ではなく、チームや農場全体で共有できる基準として整理されていきます。出荷のタイミングや管理の優先順位といった重要な意思決定も、より一貫性をもって行えるようになります。また、結果が改善した際にも「何を変えたから良くなったのか」を説明できるようになる点も大きな変化です。

まとめると、Intflowの価値は単に「AIを導入した」ということではなく、農場運営をより予測可能にし、損失要因を抑え、同じリソースでより高い成果を生み出せるようにする点にあります。農家にとっては、最終的に「不安が減る」という実感こそが最も大きな変化だといえます。

QIntflowの技術は今後どのように進化し、どのような成長が期待できるのでしょうか。

現時点におけるIntflowの技術の中核は、カメラによる観察にあります。豚の状態を24時間にわたって継続的に把握し、その変化を自動的に記録して、現場の運営に活かせるシグナルへと変換することに注力してきました。ただし、この延長線上にすぐ「完全無人の農場」が実現するとは考えていません。農場は工場のようにすべての条件をコントロールできる環境ではなく、最終的な対応や作業には人の手が関わる場面が多く残るためです。

私が考える次のステージは、畜産業においてフィジカルAI、すなわちロボティクスや自動化設備が本格的に導入される段階です。飼料の給餌や環境制御、繰り返し作業などをロボットが担うようになれば、現場の構造そのものが大きく変わっていきます。ただし重要なのは、ロボットだけで完全な無人化が実現するわけではないという点です。ロボットが「何を・いつ・どこで」行うべきかを判断するためには、現場を継続的に観察し、意思決定を行う仕組みが不可欠です。

その中でIntflowは、観察と判断の中核、いわばコントロールハブとしての役割へと進化できると考えています。現場から収集されるさまざまなシグナルをもとに優先順位を整理し、自動化設備やロボットを動かす「運営の頭脳」として機能していくイメージです。

時間的な見通しとしては、技術の進化と業界の流れを踏まえると、5年以内に自動化の基本構造は十分に実現可能だと考えています。完全な無人化でなくとも、「農場自体がある程度自律的に動く」システムは現実的な方向です。

この変化が進めば、畜産業のあり方そのものも変わっていきます。これまでは農場主が現場に常駐して運営するのが一般的でしたが、自動化の進展により、その役割は「現場で手を動かす人」から「システムの運用を管理する人」へと移行していくでしょう。結果として、農場運営は資産管理に近い性格を帯びていくと考えられ、これが畜産業の長期的な方向性になると見ています。

家畜ヘルスケア市場の規模や変化について、どのように分析していますか。

私たちは家畜ヘルスケア市場を見る際、「市場全体がどれくらいの規模か」という点よりも、1頭あたりにどれだけの管理コストをかけられる産業なのかに注目しています。豚は世界全体で年間約10億頭が飼育されており、この規模そのものが市場の土台を形づくっています。最終的に重要になるのは、農家が1頭あたりから得られる収益に対して、どれだけ管理ソリューションに投資できるかという点です。

現場感覚としては、豚1頭あたり数千ウォン程度の管理コストであれば、十分に導入を検討してもらえる水準だと見ています。豚が生み出す価値を考えれば、その一部を投資するだけで、飼料効率や薬剤費、人件費などの改善が積み重なり、比較的早い段階で費用回収が可能になるためです。その意味で、この市場は「新しい技術だから成立する」のではなく、ROIを明確に示せる構造がすでに整っている市場だといえます。

こうした視点から、現在は養豚にフォーカスしています。牛も重要な分野ではありますが、市場規模や展開のスピードという点では制約があります。一方で養豚は規模が大きく、運営方法も比較的標準化されているため、一度有効性が検証されれば普及が速い分野です。養鶏は市場ポテンシャルが非常に高いものの、個体数や環境変数が多く技術的な難易度も高いため、まずは養豚で運用モデルを確立し、その次の展開領域として位置づけています。

最後に、養豚・養鶏が魅力的だと考えている理由は、韓国での検証結果がそのまま海外でも通用する可能性が高い点にあります。運営構造が似ている市場が多く、さらに韓国の農場は要求水準が比較的高いため、ここで性能や運用面が評価されれば、海外展開の足がかりをつくりやすくなります。そのため私たちは、「韓国で検証し、海外へ展開する」という視点で市場戦略を設計しています。

韓国内外で同様の領域に取り組む企業と比べて、Intflowの差別化された競争力はどこにあるのでしょうか。

同じ領域には、当然ながらいくつかのスタートアップ企業が存在します。ただし畜産業においては、「機能が少し優れている」といった違いだけで勝敗が決まるわけではありません。重要なのは、現場に導入したあとも安定して稼働し続けるか、そして同じ結果が再現できるかという点です。農家が慎重になる理由もまさにそこにあります。一度導入に失敗すれば損失がすぐに数字として表れ、運営にも影響が出てしまうため、「良さそうかどうか」よりも「実際に検証されているか」が重視されるのです。

その観点から見ると、Intflowの差別化ポイントは大きく三つあります。

第一に、私たちはAIモデルそのものよりも「現場での運用性」を製品の中心に据えています。畜舎は設置環境のばらつきが大きく、システムが止まらずに稼働し続けること、そして農場主の日々の業務フローに自然に組み込まれることが不可欠です。そのため、単なる分析機能ではなく、現場の運営に必要なシグナルを継続的に生み出せる仕組みを重視して設計してきました。

第二に、再現性のあるリファレンスの構築方法が異なります。単一農場での成功事例にとどまらず、ダビ育種のような複数の農場ネットワークでの再現性や、ポークビルのような大規模現場での精度まで検証しています。さらに海外でも、タイのCPFとの取り組みを通じて、異なる環境でも同様に機能するかを確認してきました。畜産業では、この再現性がそのまま普及の条件になります。畜産業では、この再現性がそのまま普及の条件になります。

第三に、チームの観点です。畜産AIは短期的なプロジェクトではなく、長期的に取り組むべきテーマだと考えています。私たちはコアメンバーが同じテーマに継続的に取り組み、現場データと運用の知見を蓄積してきました。この積み重ねが、製品の安定性や改善スピードを支えています。簡単には真似できない強みは、この継続的な蓄積にあると考えています。

整理すると、Intflowの競争力は単にAIを活用している点にあるのではなく、現場で動き続ける運用性と、異なる環境でも通用する再現性、そしてそれを支える長期的な蓄積にあります。この三つが揃うことで、保守的な市場でも導入のハードルを越え、普及へとつながっていくと考えています。

韓国内外におけるターゲット顧客の構成について教えてください。

現時点での売上比率は、韓国が約70%、海外が約30%です。韓国国内でリファレンスと運用モデルをより強固にしつつ、海外では「導入可能性の高い市場にまず深く入り込む」ことで、今後の拡大基盤を築いていく方針です。

韓国でのターゲット顧客は、主に「ネットワーク型の顧客」が中心です。特に重視しているのが、地域ごとの畜協や組合ネットワークです。たとえばDodram韓豚(ドドゥラムハンドン)のように、地域単位で組織された協同組合が存在しており、この構造を私たちは一種のフランチャイズ型に近いものとして捉えています。個別の農家を一軒ずつ説得するよりも、中央や意思決定の中核を押さえることで、同じ基準のもと複数の農場へ一気に展開できるためです。そのため韓国内では、組合向けの情報発信を強化し、組合単位でのトップダウン型の営業戦略を進めています。

海外においては、現在タイと日本が主要な軸となっています。タイでは、CPFとの契約を基盤に輸出を進めており、さらなる安定的な展開を見据えて現地法人の設立も進め、運営基盤の強化を図っています。日本についてもすでに輸出を開始しており、初期リファレンスを積み上げながら市場を広げていく段階にあります。

整理すると、韓国内では組合やネットワークを通じた拡散チャネルを軸に市場を開拓し、海外ではタイと日本において大手パートナーおよび現地運営基盤を中心に拡大モデルを構築するという形で、戦略を分けています。

Intflowの収益モデルについて教えてください。

Intflowの収益構造は比較的シンプルです。ひとことで言えば、「AIカメラ(ハードウェア)を導入し、その後ソフトウェアをサブスクリプションで利用してもらうモデル」です。

まず一つ目の収益源は、AIカメラを中心としたハードウェアの販売および設置です。エッジファームは現場にカメラが設置されてはじめて機能するソリューションのため、導入が決まると、カメラ本体に加えて設置まで含めた形で初期売上が発生します。

導入後は、ソフトウェアのサブスクリプション収益が発生します。ダッシュボード、分析機能、アラート、モデルの更新といった価値を継続的に提供しているため、全体としてはハードウェアにSaaSが付随する形のビジネスモデルです。

課金は、設置するカメラの台数に応じて増える仕組みです。農場の規模が大きくなったり、管理範囲が広がってカメラの設置数が増えるほど、ハードウェア費用と月額のサブスクリプション料金もそれに応じて増加します。つまり顧客にとっては「何台設置するか」が導入範囲とコストの基準となり、私たちにとっては設置台数の拡大がそのまま売上の成長につながるモデルです。

Intflowのチーム構成と、チームワーク維持の工夫について教えてください。

Intflowのチームは現在、代表を含めて約20名で構成されており、そのうち約15名がソフトウェアおよびAI分野のエンジニアです。拠点は光州にありますが、製品を現場で安定して稼働させるためには高い技術密度が不可欠であるため、開発組織の割合を高めています。

また重要なポイントとして、コアメンバーが長期間にわたり同じ課題に取り組んできた点が挙げられます。少なくとも5名程度は5年以上にわたって同一テーマの技術開発に携わっており、知見を積み重ねてきました。畜産AIは一度作れば終わりというものではなく、現場ごとに条件が大きく異なるため、継続的なデータの蓄積とモデルの改善が欠かせない分野です。そうした意味で、私たちは本分野において韓国内でも独自の深みを築いてきたと自負しています。単にAIを適用しただけではなく、現場で継続的に機能させるための実装経験が積み重なっている点が特徴です。

チームの雰囲気としては、30代前半を中心とした若いメンバーが多くを占めています。畜産業は一般的に変化が緩やかな業界ですが、近年はAI技術の進化が非常に速く、その影響で業界自体も加速度的に変化しつつあります。私たちは、その変化に後追いで対応するのではなく、できる限り早く吸収し、現場に適した形に落とし込むことを目指しています。そのため、「安定的に長く続ける」という姿勢と「素早く試し、学ぶ」という姿勢の両方がチームの中で共存しています。

Intflowのメンバーと話し合うチョン・グァンミョン代表(真ん中)

Intflowが組織文化の形成で重視している価値について教えてください。

組織文化について語るうえで、最近強く意識しているのは、AI技術そのものが急速に平準化しているという点です。以前は「技術的に優れていること」がそのまま競争力でしたが、現在は優れたツールがすぐに広まり、開発者も積極的に取り入れるため、技術的な差は想定以上に早く縮まっています。その結果、組織としての差を生むのは技術ではなく、メンバー間のコミュニケーションや相互理解、尊重といった部分の力だと考えています。

特に当社のように一つの製品に長く向き合うチームにおいては、「コーディング力が高い」だけでは不十分です。現場で問題が発生した際には、AI、ソフトウェア、運用の各チームが密に連携する必要があり、その際に相互理解と調整力が成果を左右します。そのため、技術力に加えて、チーム内でのコミュニケーション力や協働姿勢を非常に重視しています。

さらに、Intflowには創業初期からのメンバーが長く在籍している点も大きな特徴です。スタートアップであるため、初期メンバーの中には独立して起業するケースもありますが、5年以上共に働いているメンバーがいることは重要な資産です。これは単に長く在籍しているということではなく、互いの仕事の進め方や判断基準を理解しているため、困難な状況でもチームワークを維持できるという意味で大きな価値があります。

もう一つ、文化面で私が継続的に強調しているのは、「目先だけで判断しない」ということです。スタートアップでは、現在の指標だけを見ると最適な答えが見えない場面が少なくありません。だからこそ、チーム全員が5年後の姿を頭の中で描いておくことが重要だと考えています。その将来像があることで、日々の意思決定は単なる短期的な最適化ではなく、未来につながる判断になります。そのため私たちは、将来を前提に対話を重ね、相互理解を深めながら方向性を揃える文化を重視しています。

昨年、Samsung Welstoryのスタートアップ向けオープンイノベーションプログラムWITに参加されたとのことですが、Intflowにとってどのような成果がありましたか。

Samsung Welstory(サムスンウェルストーリー)のWIT(Welstory Innovation Track)は、当初から参加を想定していたものではありませんでした。昨年、外部からの推薦を受けたことをきっかけに参加することになりましたが、結果的にはIntflowにとって大きな転換点となりました。参加時期は第6期で、運営はMark & Company Inc.(マークアンドカンパニー)が担当していました。当社にとっても同社との協業はこのときが初めてです。全体としては約150社のスタートアップが応募した、大規模なオープンイノベーションプログラムでした。

プログラムの進め方は非常に明確でした。Samsung Welstory側がまず社内で解決したい4つの課題を定義し、それを公開したうえで、対応可能なスタートアップを公募する仕組みです。当社はそのうちの一つに応募し、最終的に課題を担当するチームとして選定されました。その後、6月から約6か月間にわたり、同社の関連部門と連携しながら実務ベースで課題に取り組み、技術検証だけでなく運用面まで含めたすり合わせを進めてきました。

結果として、当社は4つの実行チームの中で最優秀チームに選ばれました。この成果の本質は「受賞」にあるのではなく、当社の強みである「現場で機能する形で問題を解く」というアプローチが、畜産分野を越えて大企業の実務環境でも有効であることを確認できた点にあります。

何よりも個人的に強く感謝しているのは、この経験によって「Intflowは養豚に特化した会社」という見方を変えることができた点です。社員食堂は当社にとって未経験の領域でしたが、WITのプロジェクトを通じて、AIによるカウント・分析技術が畜産以外の分野でも十分に応用できることを確認できました。具体的には、当社のAIピープルカウントソリューションが、社員食堂の利用者数を計測し、滞在時間を分析することで、混雑状況や待ち時間の予測を提示する仕組みとして発展し、Samsung Welstory本社の社員食堂への導入まで実現しました。その後は、他の拠点への展開も進める段階に入っています。

この経験から得られた成果は大きく二つです。一つは、現場で機能するAIが大企業の環境でも成立することを検証できた点、もう一つは、畜産以外への事業拡張の可能性が見えてきた点です。スタートアップとして、これらの実績と学びを一度に得られたことが、最大の成果だったと考えています。

Samsung Welstoryのオープンイノベーションプログラム「WIT」に参加した各社代表と並ぶ、中央のチョン・グァンミョン代表

今後3年以内に、Intflowが実現したいビジョンや市場でのポジションについて教えてください。

今後3年間で実現したいのは、韓国市場での急成長というよりも、現実的に達成可能な目標を設定し、それを継続的な売上として再現できる仕組みを構築することです。韓国内に限って見ると、養豚農場はおよそ5,000カ所存在しており、そのうち約10%をカバーすることを一つの目標としています。数で言えば、およそ500農場に相当します。この規模まで導入が進めば、単なる機器設置で終わるのではなく、当社が目指すサブスクリプション型の継続収益モデルが安定的に機能する状態を実現できると考えています。

海外は、より大きな可能性があると考えています。現時点ではタイと日本を中心に展開を始めていますが、これを足がかりとして、将来的にはヨーロッパまで拡大できると見ています。畜産業は国が異なっても運営構造に共通点が多く、韓国で検証された技術がそのまま通用する市場も確実に存在します。だからこそ、3年後には「海外売上が少し増えた」というレベルではなく、むしろ海外で韓国を上回る売上を実現できる構造を築けるのではないかと期待しています。すでに有望な国もいくつか見えており、それらの市場を軸に具体的な拡大戦略を描いている段階です。

3年以内にIntflowが目指すポジションは明確です。韓国内では養豚市場で一定のシェアを確保し、継続的な収益が回る基盤を築くこと。そして海外では、タイと日本を起点にヨーロッパへと展開を広げ、国内を上回る成長エンジンを確立することです。その結果として、Intflowが「韓国を代表する家畜ヘルスケア企業」としての地位を確立することを目標としています。

追加の資金調達を検討する場合、どの領域(グローバル展開、技術認証、研究高度化など)に注力していきたいですか。

追加の資金調達を行うとすれば、最も重視するのはグローバル展開に必要な実行体制を整えることです。海外事業は契約を締結した時点で完結するものではなく、実際に展開を始めると予想以上に資金が必要になります。国ごとに異なる認証プロセスへの対応に加え、現地での設置・運用・顧客対応を担う人材の確保や組織づくりも不可欠です。さらに、ハードウェアを含む製品である以上、物流や設置、アフターサポートといった運用コストも発生します。そのため、資金の使途としては、単なるR&Dではなく、海外での事業拡大を実現するための認証・人材・運用基盤に重点を置きたいと考えています。

これまでの投資の流れを簡単に振り返ると、累計ではプレシリーズAおよびブリッジラウンドを含む初期段階まで資金調達を進めてきました。その結果、韓国でのリファレンス構築に加え、海外展開にも着手できる土台を整えることができました。ただし現在は、「進出を始めた段階」から「拡大を実現する段階」へと移る重要な局面にあり、次の成長に向けた資本とパートナーの確保が不可欠だと認識しています。

そのため、今年下半期からIR活動を本格的に再開する予定です。目標は明確で、韓国で確立した運用モデルをベースに、すでに接点のあるタイや日本などの市場でスピードを高め、認証取得や人材、現地運用体制を整備しながら、海外で再現性のある成長構造を構築することです。

最後に、これから起業を目指す方々に向けて、何かアドバイスはありますか。

アドバイスというよりは、起業してきた中で強く感じたことをお伝えできればと思います。最近は特にAIの進化が非常に速く、「仕事の進め方」そのものが次々と変わっています。去年まで当たり前だったやり方が、今年にはもう非効率になっていることも珍しくありませんし、新しいツールが出ればチームのプロセスもすぐに見直す必要があります。そうした環境の中では、技術力そのものよりも、変化に合わせて働き方を更新し続けられるかどうかが重要になっていると感じています。

ただし、こういう時期だからこそ、創業初期に最も時間をかけるべきなのは技術ではなく、「課題」と「市場」だと考えています。「自分が解くべき課題は何か」「その市場は十分に大きいのか」「顧客は本当にそれを必要としているのか」といった問いに、時間の9割を使うべきです。この方向が正しければ、その後どんな技術を組み合わせても成長できますが、方向を誤ると、どれだけ優れた技術を投入しても苦労が長引くだけです。

また、実務的な話になりますが、初期段階ではコストを徹底的に抑えることが重要だと思います。チームを大きくする前に、製品を作り込む前に、課題設定と方向性に十分な時間を投じることが、結果として最も低コストで最短の道になります。アイデアが明確になり、「なぜこれをやるのか」が固まれば、その後の実行はむしろ効率よく進むようになります。起業とは、多額の資金を投じるゲームというよりも、正しい方向に集中し続けるゲームに近いと考えています。

インタビューを終えて

Intflowは、畜産を「技術が遅れている産業」とは捉えていません。むしろ、規模はすでに産業レベルにまで拡大しているにもかかわらず、運営の多くが依然として人の感覚や限られたサンプルに依存している点に課題があると見ています。代表のチョン・グァンミョン氏が繰り返し強調していた「革新」も、「AIを導入すること」ではありませんでした。現場で日々行われている観察を、測定可能な記録へと変換し、その記録が農家の意思決定へとつながる仕組みをつくることにあります。「畜産において本質的に重要なのは、機能を増やすことではなく、観察と意思決定のあいだにある空白を埋める運営システムだ」——そのメッセージが、対話を通じて一貫して伝わってきました。

印象的だったのは、このアプローチがいわゆる「技術ありき」で始まっていない点でした。チョン代表は自身を「典型的なキャリアというより、研究ベースの起業家」と表現していましたが、話はすぐに現場の話題へと移りました。畜舎では通信が不安定で、環境条件も多様、データも必ずしも整理された形では残りません。そうした環境を前提に、Intflowが選んだのは「より賢いAI」ではなく、「現場で止まらずに動き続けるAI」でした。カメラによる観察をオンデバイス(エッジ)で処理し、農場主が日々確認できる「意味のあるシグナル」へと変換する。その設計思想は、技術の高さではなく、運用の継続性を最優先にした判断だと感じられました。また、畜産をブルーオーシャンとしながらも「リスクが高く難しい」と語る背景も印象的でした。畜産は非常に保守的な業界です。しかし一度納得されれば、その後の広がりは速い。

印象的だったのは、Intflowの未来が「カメラソリューション」という枠に収まっていなかった点です。現在は観察と記録の自動化が軸ですが、将来的にロボティクスなどのフィジカルAIが現場に浸透すれば、その技術は農場全体を動かすコントロールハブへと進化し得ると、チョン代表は見ています。そのとき農場は、人の熟練に依存する度合いが下がり、システムそのものが収益を生み出す「資産」へと変わっていく可能性があります。「農場主が不動産オーナーのような存在になる」という言葉はやや大胆にも聞こえますが、畜産が最終的に運営の自動化へと進んでいく必然性を端的に示しているように感じられました。

単に豚を「よりよく見る」技術ではなく、「よりよく管理する」仕組みをつくる会社。インタビューを終えて、Intflowにとって次に問われるのは性能ではなく、いかに広げていくかだと感じました。韓国で確立した運用モデルがタイや日本を経て、さらに欧州へと広がっていくのか。そして、畜産の前提が「勘」から「データに基づく意思決定」へと移行するその瞬間に、同社がどのような位置を占めるのか——その先の展開に自然と興味が湧きました。

 

原文:https://www.innoforest.co.kr/report/NS00000484

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