2026年5月スタートアップ投資集計
2026年5月、国内でシード投資からIPO段階まで新規投資誘致に成功したスタートアップは計103社で、投資誘致総額は1兆740億ウォン(1兆739億5,625万ウォン)となりました。前月(109件、1兆4,189億ウォン)に比べて、件数は約5.5%、金額は約24.3%減少したものの、3月(1兆3,813億)、4月(1兆4,189億)に続き、3ヶ月連続で月間1兆ウォン台の投資が維持されました。

一方で、4月を盛り上げた大型投資(メガディール)熱気はやや落ち着きました。1,000億ウォン超えのメガディールは4月に5件から2件(Exina、THHEBLACKLABEL)に減り、200億ウォン以上の大型案件も約30件から17件へ縮小しました。 そのため5月は、「市場全体の規模はやや調整局面に入ったものの、ディープテック・ロボティクスへの投資集中はさらに鮮明になった月」と要約されます。
1-1.投資件数(カテゴリー別)

AI/ディープテック/ブロックチェーンが24件(23.3%)で投資件数1位を守りました。製造/ハードウェアとヘルスケア/バイオが17件(各16.5%)で並び、同率2位に上がったが、ヒューマノイド・ウェアラブルロボット・産業用ロボットなど、いわゆる「フィジカルAI」関連分野への投資が製造/ハードウェア分野の件数を押し上げました。
1-2.投資額(カテゴリー別)

投資額では、製造/ハードウェアが3,628億ウォン(33.8%)で首位となりました。WIRobotics(950億)・Config Intelligence(400億)・MakinaRocks(395億)・LetinAR(278億)・Cosmo ronotics(250億)など、ロボティクス・ハードウェア企業への投資が相次いだ結果です。AI/ディープテック/ブロックチェーン分野は3,327億ウォン(31.0%)で僅差の2位となりましたが、このうちExinaの調達(2,000億)だけでカテゴリー金額全体の60%を占めました。ヘルスケア/バイオ(1,378億・12.8%)とコンテンツ/芸術(1,200億・11.2%)が後に続き、上位4つのカテゴリーだけで全投資額の88.8%を占めるなど、投資の集中傾向が続きました。
5月のトレンドは「ディープテック・ロボティクス分野の躍進」、「K-コンテンツの『企業価値1兆ウォン復活』」、そして「AIメモリ・半導体分野への資金集中の継続」の3点に要約されます。CXLインテリジェントメモリ企業Exinaが当初目標を上回る2,000億ウォン超のシリーズBを終え、音楽プロデューサーTEDDYが率いるTHEBLACKLABELha企業価値1兆ウォンと評価され1,200億ウォンを調達し、さらにウェアラブルロボット・ヒューマノイド企業WIRoboticsが950億ウォンで本格的な事業拡大に乗り出しました。
投資誘致金額上位スタートアップ
2-1.投資誘致金額200億ウォン以上のスタートアップ

200億ウォン以上の大型投資案件は17件で、製造/ハードウェアとAI/ディープテック、ヘルスケア/バイオに集中しました。
AI/ディープテック/ブロックチェーン分野では、CXLベースのインテリジェントメモリ半導体企業Exinahaは、当初目標(1億ドル)を1.4倍上回る2,018億ウォンのシリーズBにより、累積投資金2,770億ウォンを突破しました。バイオテクノロジーAI基盤モデル「SPACER」を開発するAstromorphが国内シード最大規模の420億ウォンを、国産LLM企業Upstageが韓国産業銀行主導300億ウォン後続投資を、企業向けAIプラットフォームMotif Technologiesが240億ウォンシリーズBを、AI半導体・無線通信企業Neuratekが218億ウォン(Pre-IPO)を確定しました。
製造/ハードウェア分野では、歩行補助ウェアラブル・ヒューマノイド企業のWIRoboticsが950億ウォンシリーズBを完了し、シリコンバレーを拠点とするヒューマノイド基盤モデル企業Config Inteligence Koreaがサムスン・現代・LGの3社から同時に出資を受け、400億ウォンのシードを獲得しました。製造AI企業MakinaRocksがKOSDAQ上場により395億ウォン、歯科修復ソリューション企業Minish Techが300億ウォン、ARスマートグラス企業LetinARが278億ウォン(Pre-IPO)、リハビリロボット企業Cosmo RoboticsがKOSDAQ上場により250億ウォン、全固体電池企業Solivisは200億ウォン(Pre-IPO)を調達しました。
ヘルスケア/バイオ分野では、免疫抗がん剤企業NexEyeが500億ウォン規模のPre-IPOによりKOSDAQ上場に向けた準備を本格化させ、シニアケア企業Caringが400億ウォンシリーズC、低分子医薬品企業Spark Biopharmaが315億ウォン(Pre-IPO)を完了しました。
コンテンツ/芸術分野では、テヤン、ロゼ、チョン・ソミなどが所属するエンターテイメントTHE BLACK LABELが、Tencent MusicとKRAFTONを主要投資家として迎え、1,200億ウォンでシリーズB(企業価値1兆ウォン)を確定しました。
2-2.投資額100億~200億ウォンのスタートアップ

100億~200億ウォン規模の案件(8件)は、製造/ハードウェアがその多くを占めました。物流・自律走行ロボット企業Yujin Robot(173億ウォン)、超小型衛星カメラ企業CSO(162億ウォン・シリーズA)、製造AIスマートファクトリー企業InterX(160億ウォン・Pre-IPO)がラインナップを占めました。
このほか、インフルエンサーマーケティング統合プラットフォームFeaturing(153億ウォン・シリーズB)、AIデータセンター向け光通信部品企業Lessengers(150億ウォン)、食品衛生安全企業Senigen(150億ウォン)、ベビーチャイルドシートブランドPoled(130億ウォン・KOSDAQ上場)、ブランドコマース企業ByteLab(100億ウォン・CJオリーブヤング、Atinum Investmentなどが参加)が5月の中堅案件を形成しました。
5月に資金調達した主要スタートアップ
▪️Exina(約2,000億ウォン・シリーズB)
CXL(Compute Express Link)ベースのインテリジェントメモリ半導体企業Exinaは、当初1億ドル(約1,450億ウォン)を目標としていたシリーズBを、世界的な需要拡大を受けて2,018億ウォンまで拡大して完了しました。投資はAtinum InvestmentとIMM Investmentが共同リードになり、さらにMirae Asset Venture Investment・LB Investment・Stick Ventures・Wonik Investment Partners・SBI Investmentなど、20以上の機関が参加しました。累積調達額は約2,770億ウォン(1億8,500万ドル)、投資後の企業価値は約8,540億ウォン(5億7,000万ドル)と評価されています。
Exinaは、SK hynix最年少役員出身のキム・ジニョン代表が2022年に設立したファブレス半導体企業で、メモリ自体で演算を行い、CPU・GPU間でメモリプールを動的共有する「メモリ中心コンピューティング」アーキテクチャを開発し、AI時代の「Memory Wall」問題の解決を目指しています。同社はSamsung Electronicsの製造プロセスを利用し、CXL 3.x対応チップを開発中であり、今回の調達資金は量産準備とグローバルビッグテックのPoC拡大に充てられる予定です。
📺 Exina関連動画:Exina、CXLメモリ加速チップデモにビッグテックから「ラブコール」
▪️WIRobotics(950億ウォン・シリーズB)
歩行補助ウェアラブルロボット・ヒューマノイド企業ウィロボティクス(WIRobotics)は、950億ウォンのシリーズBを完了し、ヒューマノイド事業を本格始動させました。JB Investmentがリードに乗り出し、Intervest・Hana Ventures・Smilegate Investment・SBVA・NH Investment & Securities・Company K・GU Investment・FuturePlayなどが参加しました。2024年シリーズA(130億)の投資家全員が追加投資を行い、累積調達額は約1,080億ウォンとなりました。
サムスン電子出身のイ・ヨンベ氏とキム・ヨンジェ氏が共同代表を務める同社は、歩行補助ウェアラブルロボット「WIM(ウィム)」で商用化3年目に累積3,000台を突破し、売上も2023年5.6億ウォン、2024年13億ウォン、2025年27.9億ウォンへと毎年2倍以上の成長を続けています。投資家は、WIMが積み上げた実ユーザーデータ資産とヒューマノイド「ALLEX」の開発力、さらにNVIDIA「Physical AI Fellowship」選定など、グローバルエコシステムとの連携を高く評価しました。
📺 WIRobotics関連映像:WIRobotics、個人用ウェアラブルロボット「WIMS」公開…年間4,000台販売目標
▪️Config Intelligence Korea(400億ウォンシード)
ヒューマノイド向けロボットファンデーションモデル企業Config Intelligence Koreaが400億ウォンのシード資金を調達しました。この案件は、サムスン電子、現代自動車グループのオープンイノベーションプラットフォームゼロウォン(ZER01NE)、LGグループのCVCがスタートアップへの投資に同時に参加した異例のケースであったこと、また韓国製造業を代表する3大グループが初期段階から投資したという点で話題になりました。
2024年8月に米国・サンノゼに設立された同社は、2026年3月時点では従業員8名という少数精鋭ながら、この規模の投資を実現しました。同社の強みは、ロボットが実際の作業を学習・実行するのを助けるフィジカルAIデータインフラ、すなわち韓国最大規模の「Human Data Factory」システムです。社員には、Meta・Google・Waymo・KAIST・NAVER出身の専門家たちが集結しているとされています。
▪️THEBLACKLABEL(1,200億ウォン・シリーズB)
音楽プロデューサーTEDDYが率いる芸能事務所THEBLACKLABELは、1,200億ウォンのシリーズB資金調達を終え、投資後約1兆ウォンの企業価値を認められました。主要投資家にはTencent Music EntertainmentとKraftonが参加し、初期投資家であるセハン創業投資といった既存株主も追加出資に乗り出しました。累計調達額は約1,625億ウォンです。
THEBLACKLABELには歌手テヤン(BIGBANG)、ロゼ(BLACKPINK)、チョン・ソミ、MEOVV、ALLLDAY PROJECT、俳優パク・ボゴム、イム・シワンなどが所属しています。同社は、Tencent Musicとアジア・グローバル音源・ライブ市場を攻略し、Kraftonとは音楽・映像・ゲームを結び合わせたコンテンツ融合ビジネスを展開する計画です。低迷していた韓国エンターテイメント業界における大型投資が、再び「企業価値1兆ウォンクラブ」へ復帰したことを象徴する案件として評価されています。
▪️Asteromorph(420億ウォンシード)
バイオテクノロジーAIファウンデーションモデル「スペーサー(SPACER)」を開発するAsteromorphが420億ウォンのシード資金を調達しました。設立からわずか1年で累積シード資金470億ウォンを確保したことで、韓国史上最大規模のシード投資となりました(韓国のシード投資平均は約17億ウォン)。チャン・ビョンギュKRAFTON議長が設立したBonAngels Venture Partnersをはじめ、IMM Investment、Mirae Asset Venture InvestmentなどVC9社に加え、韓国産業銀行・KDB Capitalも参加しました。
SPACERは、自ら生命科学の仮説を生成するAIモデルで、過去1年間に18万本以上の生物学論文を事前学習しました。 「SPACER1.0」は、OpenAIの科学能力ベンチマーク(「Frontier Science Research」)において33.9%を記録し、「GPT-5.4 Pro」に次ぐ世界2位となりました。同社は高卒認定試験・独学学位制度を経て、16歳でソウル大学医学部研究員として働いたイ・ミンヒョン(24)代表が2025年2月に設立し、この代表は韓国政府の「AI科学者プロジェクト(K-Moonshot)」のAI科学者部門総括PDにも選ばれました。(ZDNet)
📺Asteromorph関連映像:[マネーズーム]大統領候補も言及した「バーティカルAI」…とは?
▪️NexEye(500億ウォン・Pre-IPO)
免疫抗がん剤企業NexEyeは、500億ウォン規模のPre-IPOを完了し、KOSDAQ上場へ向けた準備を本格化させました。既存投資家のDSC Investment、Atinum Investment、TS Investmentに加え、韓国産業銀行、DS Asset Management、Intervestなどが新たに合流し、累積調達額は1,370億ウォンとなっています。
同社は、腫瘍微小環境における免疫チェックポイント阻害剤耐性因子を発見するプラットフォーム「ONCOKINE」を基盤に、抗体・ADC新薬を開発しています。臨床段階のパイプラインNXI-101、NXI-201を保有しており、2026年4月にKOSDAQ技術特例上場のための技術性評価にも合格しました。今回の資金は、第2臨床パイプラインNXI-201のグローバル臨床と次世代ADC候補物質のR&D拡大に充てられる予定です。
5月の主要M&Aディール
5月には、音声AIと外食フランチャイズ分野で大きな意味を持つ買収案件が成立しました。共通するテーマとして、「AI技術の内製化」と「ブランド・インフラの統合」が浮上しました。
▪️UBASEによるリターンゼロ(VITO)の買収
AIカスタマーセンター(AICC)を運営する総合ビジネスサービス企業UBASE Groupは、音声認識AIスタートアップリターンゼロを買収しました。(買収金額は非公開)リターンゼロは、通話内容を自動的に文字変換・保存するアプリ「ビート(VITO)」で知られる会社であり、高精度な話者識別技術と30件の特許、リアルタイムSTT処理競争力を保有しています。
UBASEは、顧客の意図を理解し、相談対応から完了までをAIが自律的に行う「完全自立型相談AIエージェント」を7月に世界で初めて商用化する計画で、リターンゼロとの合流を通じてSTT・TTSエンジンの高度化、アウトバウンドコール専用AIエージェントの開発、多言語対応AIエージェントの開発など、5大協力プロジェクトを推進します。これは、これまで外注BPO企業であったUBASEが音声AI技術を直接取り入れ、「AI BPOテック企業」へと飛躍しようとする戦略的買収です。

リターンゼロ代表 イ・チャンソル氏
▪️オーケストラPEによるMAMMOTH COFFEEの買収
プライベートエクイティファンドオーケストラ・プライベート・エクイティ(Orchestra PE)は、低価格コーヒーフランチャイズMAMMOTH COFFEE(マンモスコーヒー)の経営権と、コーヒー豆焙煎専門企業Seojin Roasters(ソジンロスターズ)の株式100%を約1,000億ウォンで買収完了しました(2026年6月1日)。
MAMMOTH COFFEEは全国約900店舗の加盟店で年間売上約850億ウォン、Seojin Roastersは年間売上約230億ウォン規模です。
Orchestra PEは、以前「KFC Koreaの売却」に成功した外食専門の運営会社であり、コーヒー豆の焙煎を行うSeojin Roastersから、店舗運営を行うMAMMOTH COFFEEまで垂直統合した後、日本をはじめとする海外市場への進出を加速させる計画です。今回の買収でOrchestra PEの累積運用資産(AUM)は約4,500億ウォンへと拡大しました。

原文:https://www.innoforest.co.kr/report/NS00000532/
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