「高齢化」の先輩国・日本がDXに奮闘する理由[Geeks]
「高齢化」の先輩国・日本がDXに奮闘する理由[Geeks]
日本のDX総力戦①
「アナログ国家」 日本で数年前から大々的なデジタル革命が起きています。政府の積極的な主導の下、行政、産業、日常など全分野で国を挙げてのデジタル転換(DX)が行われていますが、日本にとってDXはもはや選択ではなく必須で、生存に関わる問題になったからです。
DXは日本の重要な社会問題を解決する鍵となります。代表的な例として日本は深刻な高齢化による人手不足の問題があります。接客・清掃ロボットなどが単純労働を代替するだけでなく、AI技術も事務仕事の効率を高めてくれています。日本がDXの必要性を実感した時期、日本市場に進出した韓国人起業家がいます。AIスタートアップAllganize(オルガナイズ)のイ・チャンス代表です。彼が日本市場に進出して見聞きしたことを韓経Geeksに話してくれました。
AI認知・検索スタートアップのAllganizeは5年前、日・韓・米市場を同時に開拓した。イ代表は現在米国に居住しているが、四半期に1度の頻度で日本と韓国を訪れる。定期的な取締役会や事業状況の把握に加えて、3カ国の技術文化トレンドがどのように変化しているのかをチェックする良い機会にもなる。
9月に日本を訪れた時、面白い広告を見た。事務所の清掃が不十分なので、掃除員を増やしたらどうかと尋ねる社員に社長が、「人手が足りない!」と叫ぶ。すると、解決策として登場したのが「DX清掃ロボット」だ。
人手不足をデジタルトランスフォーメーションで解決するという意味なのだ。韓国やアメリカのロボット掃除機の広告は、水拭き機能、掃除エリア設定機能、吸引力など機械のスペックを中心に紹介する。一方、日本の場合は「人手が足りないからロボット掃除機を使ってデジタルトランスフォーメーションを完成させよう」というキャッチコピーを掲げる。イ代表にはこれが日本の現実を反映しているように見えた。
日本のロボット掃除機「Whiz i」の広告
人手不足の日本 DXは「死活問題」
日本の人手不足は、少子高齢化に伴う人口減少で労働人口が不足していることが原因だ。日本の生産年齢人口(15~64歳)は1995年がピークで、総人口は2008年をピークに減少している。民間研究機関PERSOL(パーソル)総合研究所の「アフターコロナの新しい働き方2022最新動向調査レポート」によると、2030年に644万人の人手が不足するという。
Allganizeも日・韓・米で有能な人材を探そうと、求人広告を出し採用担当者が奮闘しているが、日本でIT人材を確保するのは容易ではない。日本商工会議所が今年7~8月に中小企業6,000社を対象にアンケート調査を実施した結果、人手が足りないと回答した企業が65%に達した。IT企業は71.3%も人手が足りないと回答した。求人広告を出したが、1人も採用できなかった企業も20%に達した。
このように人手不足に苦しむ日本は、デジタルトランスフォーメーションに奮闘している。2018年に総務省が発表した報告書の主題は「2025年の崖」だった。今後、日本の社会でデジタルトランスフォーメーション化が進まなければ、2025年以降、年間最大12兆円の経済損失が発生する可能性があるという内容だ。日本のデジタル改革を主導する中央政府機関「デジタル庁」は2021年9月に公式発足し、行政システムの統一及びオンライン化をデジタル改革推進の中心としている。
日本の金融会社に選ばれた「No Tagging」技術
Allganizeが日本に支社を設立したのは2019年1月だ。デジタルトランスフォーメーションが日本の社会的話題になり始めた時期だったので、AIソリューション事業で、日本に進出する良いタイミングだった。
Allganizeの日本の最大顧客会社は、400年の歴史を誇る金融業界1位のSMBC(三井住友銀行)だ。SMBCは2017年にシリコンバレー・デジタルイノベーションラボを設立し、複数のスタートアップとの提携及び投資を増やし始めていた。そのような中、Plug and Play(プラグアンドプレイ)イベントでAllganizeと出会った。当時、Allganizeのブースには「No Tagging(データのタグ付け不要)」というキャッチコピーが書かれており、「これは本当に可能なのか」とSMBC側が関心を示したのだ。
SMBCは日本で初めて統合AIシステムを顧客に提供した金融機関で、早期にAIをコールセンターに導入したAI先導企業だ。当時の担当者の悩みは、AIモデルの精度を高めるために大量のデータセットを収集・タグ付けし、ローンチ後も繰り返しトレーニングするのに、あまりにも多くの時間がかかるということだった。コールセンターのオペレーターたちが、AIによる誤案内データを集めてAI開発チームに共有しなければいけないため、業務が多くなりすぎるという否定的な意見も多かった。人手不足によりDXを推進しなければならないのに、DX推進のためにまた多くの人が仕事をしなければならないとは、なんという皮肉だろう。
Plug and PlayのイベントでのSMBCの担当者とイ・チャンス代表(写真中央)
それなのに、Allganizeはデータタグ付けの必要がないと自信を持って言うので、SMBC側はPoC(技術検証)を進めてみようと提案したのだ。AllganizeのAIモデルは、顧客に提供する前に産業別に特化した学習を既に終えたモデルだ。さまざまな金融情報を使って既に学習を終えたモデルであるため、SMBC PoCの初期段階で別途の学習無しに76%の精度を示し、FAQの文書約4,000文を学習した後は、2週間で93.4%の精度を記録した。
従来のビッグテック企業のソリューションは初期精度が40%、学習期間も1年かかってようやく精度が90%をやや超えるものだった。他のソリューションに比べ1/10程度のデータで十分、且つ、AIモデルの反復学習コストも削減可能なため、Allganizeが採用された。SMBC日興証券と三井住友カードのコールセンターで、顧客の質問にオペレーターが迅速且つ正確に答えるためのソリューションとして、AllganizeのAlli(アリィ)が使用されており、60社以上の系列会社でもDXに貢献している。
「業界横断型」AIシステムを目指す
人手不足を解決するための日本のデジタルトランスフォーメーション化は拡大し続ける見通しだ。デジタルトランスフォーメーションは、膨大な量のデータを扱いAIでビジネスを革新するための基礎である。
日本の経済産業省は「Connected Industries(コネクテッド・インダストリーズ)」政策を積極的に推進している。製造、バイオ、プラントなど日本が強みを持つ5大産業分野のデータを連結し、データの共有領域を拡大する。これを基に、AIシステムを開発して新しい産業と技術を育成するという内容だ。2026年までに、AI関連産業からユニコーン企業や新規上場企業を5社以上出すことを目指している。
このような業界横断型AIシステムを開発する上で最も重要なのは、データがボトルネックになってはならないということだ。ほとんどの企業が、AIプロジェクトでデータを集めてラベル付けをするためにリソースを注ぎ込むので、担当者たちを悩ませている。AIモデルのトレーニングデータから作らなければならない場合がほとんどだからだ。こうして作られたトレーニングデータでAIモデルを学習させ配布した後、AIが間違った答えを出したら、それを担当者たちがまた収集してAIエンジニアたちに送る。
エンジニアが新しいデータでAIを学習させた後、担当者たちに伝達するため、簡単な問題を直すのにも1ヶ月がかかる。担当者のワークフローとAIを学習させるためのデータフローが分離されると、AIプロジェクトは必ず失敗する。人手不足から始まったDXのためにより多くの人手が必要になるという事態は、徐々になくなる見通しだ。
Allganizeのイ・チャンス代表
イ・チャンス代表は、KAISTコンピュータサイエンスの修・学士課程を修了し、AI分野で繰り返し創業をしてきた起業家です。大学卒業後、勤めていた大企業を辞め起業に成功しました。2010年にデータ分析会社5Rocks(ファイブロックス)を設立し、4年ぶりに米国のTapjoy(タップジョイ)に売却した後、Tapjoyの首席副社長に就任しました。業界では成功したEXIT(イグジット)の事例として評価されています。Tapjoyに勤めていたころ、再び会社を飛び出し2017年に米国のシリコンバレーでAllganizeを設立しました。Allganizeは認知検索ソリューション(利用者が質問するとAIが資料から答えを探し出してくれる技術)とチャットボット「Alli(アリィ)」で、顧客企業と社員の検索時間短縮に貢献しています。
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