ニュース

「デジタル投資が活発な日本…『第2の起業』精神で飛び込むべき」

アイキャッチ
目次

「デジタル投資が活発な日本…『第2の起業』精神で飛び込むべき」


日本市場の攻略に乗り出したWrtn・NRISE・Team SPARTAの特別座談会

岸田文雄首相は15~17日、米国サンフランシスコで開かれるアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議に出席し、スタートアップのセールス外交に乗り出す。日本政府は、今後5年間でスタートアップ投資を10倍に増やすとともに、米国のシリコンバレーの対日投資を牽引する計画だ。

 日本政府のスタートアップ育成計画の一つとして、海外の有望なスタートアップを日本に進出させることを目標にしている。これは、海外のスタートアップが持つ「革新的なDNA」を日本市場に導入することを意味する。そのため、日本で起業しようとする外国人のための「スタートアップビザ」制度も簡素化し、期間も最長1年から最長2年に延長することになった。

 特に、様々な国の中でも韓国への関心が高い。地理的に近く、デジタル変換(DX)速度が速いからだ。特に、DXが最大の話題となっている日本の大企業が多くの関心を示している。

 14~15日、東京ビッグサイトで開催されたスタートアップの祭典「クライマーズスタートアップジャパン(Climbers Startup JAPAN) 2023」には、日本市場に進出する韓国のスタートアップが参加した。△LionRocket(ライオンロケット)、△LONGEST(ロンゲスト)、△Wrtn technologies(リートンテクノロジー)、△NRISE(エヌライズ)、△Team SPARTA(チームスパルタ)、△ヒュージョンなどの6チームだ。

 

このうち、クライマーズスタートアップジャパンの「ドリームピッチ」のステージに登壇した△Wrtn technologies、△NRISE、△Team SPARTAの日本事業担当者に、日本進出の理由と戦略について話を聞いた。韓国のスタートアップの日本市場進出を支援しているスターシア・ベンチャー・スタジオも同席した。

 

-日本進出を決意した理由は?

Wrtn technologiesのキム・テホ理事/東京=キム・テヒョン記者 

▶Team SPARTAのイ・ヒョンウングローバルリーダー(以下、イ・ヒョンウン) = 開発者教育プラットフォームを運営するTeam SPARTAは現在、累積受講者数が70万人を超え、年間4,000人の開発者を育成している。日本市場には、今年4月に第1期生を募集し進出した。日本では今、DXがメガキーワードだ。韓国と違うのは、個人の自己開発需要よりも企業や政府の開発者教育需要が高いという点だ。日本に進出した当初は韓国と同じようにB2C(企業・顧客間取引)からスタートしたが、現在はB2B(企業間取引)に注力している。

 ▶Wrtn technologiesのキム・テホ理事(以下、キム・テホ) = Wrtn technologiesは韓国で120万人が利用する生成型人工知能(AI)プラットフォームとして定着した。また、海外市場に進出する過程で、非英語圏をターゲットにした。OpenAIのChatGPTは英語ベースなので、どうしても非英語圏の利用者にとっては不便な点がある。これを、各国の言語や文化圏を考慮して現地化するのが重要なポイントだと考えた。その中でも日本を選んだ理由は、ChatGPTの利用件数が世界でも上位に入るほどAIへの関心が高いからだ。

 ▶NRISEのイ・ワンジェ最高財務責任者(以下、イ・ワンジェ) = NRISEは2011年に設立された会社で、出会い系アプリ「WIPPY」と運動アプリ「QUAT」を運営している。日本では出会い系アプリが一般的に使われている。韓国が出会い系アプリのユーザーエクスペリエンス(UX)を教育しているのに対し、日本はすでにUX教育が完了している。市場規模も韓国より日本のほうが3倍以上大きい。運動アプリについても、最近の日本の変化したトレンドに合わせて進出させる計画だ。過去、日本は健康管理が栄養剤中心であったのに対し、最近は運動中心に転換している。

 

-日本進出で最も難しい点は何か?

/東京=キム・テヒョン記者

▶イ・ワンジェ = 現在、本格的な日本進出を控えている状況で、法人設立のための現地マネージャーを見つけるのが容易ではないという話をよく聞く。韓国の企業文化を共有しながら、日本でビジネスをリードできる人材を見つけるのは容易ではないため、今はこれに全精力を注いでいる。

▶キム・テホ = 11月1日に日本に法人を設立するにあたり、良い現地マネージャーを見つけることが重要だと思った。資本金や人材などの主要資産を日本に移す必要があるため、現地マネージャーの役割は重要だ。また、日本の文化に慣れることも大切だ。そのためには日本の文化的背景を理解することが重要で、代表的なものが「おもてなし」だ。「最高の歓待」を意味するおもてなしは、顧客サービス(CS)において必須だ。このような部分を理解できなければ、円滑なビジネスは難しい。

▶スターシア・ベンチャー・スタジオのキム・ヨイル代表(以下、キム・ヨイル) = 当然のことだが、日本市場に進出するということは、日本のスタートアップや大企業と競争するということだ。現地マネージャーを採用する上で、確かな競争力を持つ人材を選ぶ必要がある。日本人の現地マネージャーを採用する際も、ビジネスをリードした経験のあるCクラスレベルの人材を採用する必要がある。そのためには、年収やストックオプションなどの十分なインセンティブを提供する必要がある。新規市場への参入を第2の起業と考えながらアプローチする方法が必要だ。

 

-日本の起業エコシステムの特徴は何か?

Team SPARTAのグローバル事業リーダーイ・ヒョンウン氏/東京=キム・テヒョン

▶イ・ヒョンウン = 日本政府の積極的な姿勢が印象的だ。最近、自治体ごとにスタートアップ支援センターも増えており、日本の大学生もスタートアップ起業に積極的に取り組んでいる。特に、海外スタートアップへの支援が目立つ。機関名から見ても、グローバルスタートアップを目指すところが多い。

▶キム・テホ = B2Bに集中しているスタートアップが多いのが特徴的だ。日本は韓国に比べて企業公開(IPO)のハードルが低いため、早く収益を上げ、上場を通じて投資回収(EXIT)を行うのが一般的だ。そのため、安定して収益を上げることができるB2Bにより焦点を当てているようだ。B2C事業を通じてブランドを強化し、企業価値を高める韓国とは状況が異なる。

▶キム・ヨイル = ベンチャーキャピタル(VC)の投資を受ける際、一般的に韓国と日本の違いは大きくない。期間も通常、ディール発掘から投資決定まで3ヶ月程度かかる。異なる点は、初期投資段階からIPOなどの投資回収に向けた確実な事業計画が必要であることだ。少なくとも5年間の事業計画を示さなければならない。韓国よりデューデリジェンス(適正評価手続き)が厳しいのが特徴だ。

 

-日本進出を考えているスタートアップに一言

 ▶イ・ヒョンウン = 一番気をつけなければならないのはスピード感だと思う。韓国のスタートアップは意思決定が早いが、日本は比較的ビジネス速度がゆっくりな文化だ。2~3ヶ月前に会った人たちとも、ようやく協業について話し合い始めた段階だ。二つ目は、完璧な日本語が話せる人材が必要だということだ。サービスを日本語化する過程で、ニュアンスまで再現できる人材が必要。

▶イ・ワンジェ = 他の国もそうだが、現地化に対する努力が重要だ。NRISEも過去にインドと台湾に進出した経験がある。当時、サービスを単純に翻訳する形で進出したが、市場ではあまり受け入れられなかった。今回の日本進出の場合、アプリ開発から日本語を基準にして一からやり直している。日本文化への理解も重要だ。韓国では、NRISEは取引ごとに支払いをする形で運営しているが、取引ごとの支払いに慣れていない日本では、サブスクリプション型で進める計画だ。

▶キム・ヨイル= 企業宣伝を行う上で、韓国とは違うということを認識するべきだ。韓国の場合、費用を投入して企業を宣伝し、その効果もある程度期待できる。しかし、日本は違う。日本の場合、企業宣伝はマスコミの記者に頼ることが多い。新聞やテレビメディアの需要が依然として高いからだ。レガシーメディアのネットワークを持っている広報担当者を見つけることが重要である。

東京=キム・テヒョン記者


トップ画像:14~15日、東京ビッグサイト開催のスタートアップの祭典「クライマーズスタートアップジャパン(Climbers Startup JAPAN) 2023」に参加したTeam SPARTAのグローバルリーダーイ・ヒョンウン氏(左から)、Wrtn technologiesの理事キム・テホ氏、NRISEの最高財務責任者イ・ワンジェ氏、スターシア・ベンチャー・スタジオ代表のキム・ヨイル氏/東京=キム・テヒョン記者

原文:https://www.unicornfactory.co.kr/article/2023111503335127232

/media/UNICORN FACTORY
記事を書いた人
UNICORN FACTORY

2021年に発足したUNICORN FACTORY(ユニコーンファクトリー)は、MONEY TODAY(マネートゥデイ)が韓国の総合誌で初めてスタートさせたスタートアップ専門のメディアプラットフォームです。 溢れるニュースの中でスタートアップ生態系に必要なニュースだけを厳選し深く伝えます。

  • ホーム
  • ニュース
  • 「デジタル投資が活発な日本…『第2の起業』精神で飛び込むべき」