NETFLIXが「IP先行購入」を拡大…韓国の制作会社が対抗するには「税制支援」が必要不可欠

グローバルOTT（オンライン動画サービス）による韓国コンテンツIP（知的財産）の「先行購入」が増えている。制作費の急増と広告収入の減少などで、資金難に苦しんでいる韓国の制作会社がIPを売却しているのだ。2年前の「イカゲーム」大ヒット当時から提起されていた「IPの所有権」に関する懸念が現実化した。当面の生存のためにIPまで放棄する韓国の制作会社を救うためにも、税制支援などの政策的支援の必要性が提起されている。

12日、関連業界によると、韓国の代表的なコンテンツ企業であるCJ ENM（77,400원 ▼700 -0.90%）が昨年確保した韓国のドラマIP数は34件だが、NETFLIXは42件だったという。2021年にはCJ ENMが33件、NETFLIXが30件だったが、1年で逆転したのだ。

IPはコンテンツ制作会社の核心資産だ。ヒットした作品のIPを保有すれば、コンテンツ公開による収益を100％確認することができ、IPを活用して収益源を多様化したり、2次著作権事業にまで広げることができるからだ。

実際、未来アセット証券の分析によると、HBOの「ゲーム・オブ・スローンズ」シリーズは、全世界で購読料とDVD・ブルーレイ販売などを通じて、約19億ドル（約2,650億円）の収益を上げたと推定される。シリーズ全体の合計制作費、推定5億8,000万ドル（約809億円）を除いても13億ドル（約1,813億円）の利益を得たことになる。ゲームやグッズなどの2次収益を考慮すると、「ゲーム・オブ・スローンズ」のゲームIPは約20億ドル（約2,790億円）の価値があると評価されている。これが、良質なIPが持つ絶大な力だ。

そのため、主要なグローバルOTTは韓国内外の制作会社を対象に、△制作費の100%、△追加収益、△IP所有権を丸ごと購入する方式を取っている。これには、制作会社がコンテンツ制作だけに専念できる環境を提供するというポジティブな側面もあるが、IP所有権を保有するOTTが作品興行収益のほとんどを占有することに関して批判の声もある。

未来アセット証券のチャ・ユミ研究員は「韓国の制作会社の立場としては、IP販売は安定的な利益創出とリスクを最小化するための最善の選択」としながらも「中長期的に韓国内のコンテンツ産業がリレーティング（再評価）されるためには、版権と知的財産権の所有権が必ず韓国の制作会社になければならない」と指摘した。

韓国の制作会社も、IPの重要性を知らずに権利を売却するわけではない。グローバルOTTの先行購入戦略に対抗するためには、自前で制作費を調達しなければならないが、市場が厳しい状況なのだ。特に、グローバル資本が流入しながら、韓国ドラマの制作費はますます上昇する傾向にある。実際、2011年のドラマ1話当たりの平均制作費は1億ウォン（約1,100万円）前後だったが、2016年の「トッケビ（tvN）」は9億ウォン（約9,800万円）、昨年の「財閥家の末息子（JTBC）」は22億ウォン（約2億円4,000万円）に達した。

広告市場も低迷している。2021年の放送広告の市場規模は3兆1,248億ウォン（約3,415億円）で、2017年の3兆1,663億ウォン（約3,461億円）に比べ逆成長した。また、「2022年広告主の現状調査」によると、昨年の媒体別予想執行率はオンライン・モバイルが44.2%で、印刷物（15.6%）、地上波TV・ラジオ（12.4%）、 総合編成チャンネル ・ケーブルTV（11.0%）を圧倒した。さらにKBS・MBCなどの地上波放送が平日ドラマを廃止・縮小しながら、ドラマの選択肢も減った。流通チャンネルを見つけられなかったためお蔵入りになるドラマが、IPを放棄してまで海外プラットフォームに頼るしかない環境が作られたのだ。

そのため、制作会社がIPを確保し、コンテンツ制作・流通などを主導する「ディズニー型企業」の育成が必要だ。また、何よりも制作費の負担を軽減できる税制支援の必要性が提起されている。現在の映像コンテンツ制作費の税額控除率制度は、大・中堅・中小企業に対してそれぞれ3・7・10%で、コンテンツ先進国に比べて低い水準である。コンテンツ業界の関係者は、「米国・英国の税制支援規模が20～25%水準であるだけに、韓国コンテンツの税制支援も世界平均に合わせるべきだ」とし「ディズニーと直接対決するグローバルコンテンツ市場で、制作費の税額控除を企業規模で区分するのも無意味だ」と指摘した。

原文：https://www.unicornfactory.co.kr/article/2023061214485919449