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生成型AIスタートアップの起業につながった4つの転換点

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生成型AIスタートアップの起業につながった4つの転換点

Wrtn Technologies(リートン・テクノロジーズ)のイ・セヨン代表は、学生時代から起業するに至るまで、人生の重要な転機を4つ経験した。

最初の転機は2008年にさかのぼり、小学校6年生の時に迎えた。当時、韓国初の宇宙飛行士の登場と宇宙ステーションの生中継が社会的関心事として浮上していた時期で、科学に対する並々ならぬ興味を持った彼は、宇宙食に対する疑問を解決するために韓国食品研究院の研究員と直接接触し、宇宙食の提供を受けることができた。この経験は彼に大きなモチベーションを与えてくれた。

彼の第二の転機は、自分自身の関心を主体的に探求し、問題の解決方法を文章で記述する活動の中で訪れた。このような活動は後に「韓国青少年社会科学研究所」という組織の設立につながり、その組織は最終的に全国的な学術大会を開催する機関に成長した。

三つ目の転機は、予期せぬ新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)だった。2020年、大規模な対面による学術大会の開催計画を中止せざるを得なかった。しかし、この危機は彼にとって、オンラインクラスと非対面カンファレンスプラットフォームの開発という新たな機会となった。

最後に、四つ目の転機は、生成型人工知能(AI)技術に関連する起業アイデアとして訪れた。既存の学術イベントの運営の経験とパンデミック期間中に蓄積されたオンラインプラットフォームの構築力を基に、生成型AIを活用して「表現のボトルネック」現象を解決する方法を模索し、このアイデアは2021年4月の法人設立につながった。

イ・セヨン代表の旅は好奇心から始まり、絶え間ない探求と挑戦を経て起業に至り、現在、会社は100人以上のチームメンバーと共に彼のビジョンを実現している。

信用保証基金の主催で4月22日、Google for Startups Campus(グーグル・フォー・スタートアップキャンパス)で開かれたStart-up PLAY GROUND Opening DAY(スタートアッププレイグラウンドオープニングデー)でWrtn Technologiesのイ・セヨン代表が講師として登壇し、自身の起業過程を特別講義形式で披露した。

サービス加入者300万人を誇るAIサービスプラットフォーム企業「Wrtn Technologies(以下、Wrtn)」は、2022年からAIライティング補助ソリューションをはじめ、ビジネス用文書の草案作成、AI画像生成サービスを相次いで発表した。3月末には、AI検索を中核機能として全面的に強調するアップデートも実施した。Wrtnは、AIエージェント・ツール作成のための「Wrtnのスタジオ」を全面アップグレードした「Wrtnのスタジオプロ」も近日中に発表する予定で、文書分析AIチャットとソーシャルネットワーキングAIサービスも準備中だ。

2021年に設立したWrtnは設立以来、持続的な成長を続け、累計190億ウォン(約21億6,000万円)規模の投資金を確保した。Wrtnは開始段階でMashup Ventures(マッシュアップベンチャーズ)から初期資本を調達し、その翌年11月にはSui Generis Partners(スイジェネリスパートナーズ)とCapstone Partners(キャップストーンパートナーズ)、中小企業銀行、N Partners(エヌパートナーズ)、信用保証基金などからプレシリーズA段階の資金を調達した。2023年6月、Wrtnは150億ウォン(約17億円)規模のシリーズA資金を追加で受けた。

同日、韓国エンジェル投資協会のコ・ヨンハ会長は「起業エコシステムと国家競争力」のテーマで講演を行った。また、信用保証基金ソウル西部スタートアップ担当のチェ・ジュニョク次長は、AI市場分析と審査ポイントなどについて発表し、スタートアップ審査の中核要素を共有した。

今回のイベントは、信用保証基金のチェ・ウォンモク理事長とソン・ジョンウク4.0起業業部長ら、業界関係者とスタートアップ関係者約50人が参加し、盛況裏に行われた。講演後には、参加者同士のネットワーキングのためのスモールトークの時間が設けられ、有意義な交流の場となった。


(以下、イ・セヨン代表の講演全文まとめ)

Wrtn Technologiesのイ・セヨン代表が講演している。ⓒPlatum

  • 学生時代から起業までの4つの重要な転機

3周年を迎えた生成型AIスタートアップ「Wrtn Technologies」の代表を務めているイ・セヨンです。これまでの人生で迎えた4つのターニングポイントが、どのように起業につながったのかについてお話しします。

  • 最初のターニングポイント

2008年、私は小学校6年生で、その時が私の人生の最初の大きな転機となりました。韓国で初めて宇宙飛行士が選抜され、毎日のようにニュースでそのニュースが取り上げられていた頃です。特に宇宙ステーションからの生中継は大きな関心事でした。科学と探求に没頭していた頃、宇宙飛行士関連のニュースを見て宇宙食に興味を持ち、それに関するレポートを書きたいと思いました。

当時、韓国型宇宙食に関する報道を目にした後、宇宙ステーションでの味噌汁やキムチなどの食事の場面がとても好奇心を刺激しました。その味と製造工程を知りたくなり、それをテーマにレポート作成を計画しました。しかし、情報を見つけるのが難しく、一般人がアクセスしにくい領域であることに気づきました。

その時、韓国食品研究院のキム・ソンス博士がテレビで宇宙食の製造について説明しているのを見ました。放送後に画面に表示されたメールアドレスを覚えておき、好奇心からメールを送ってみました。意外にも翌日に返信があり、私が希望する情報と一緒に実際の宇宙食をいただくことができました。

世界的な専門家が小学生の要望に真摯に対応し、サポートまでしてくれるという経験は、私にとって大きな衝撃と同時にインスピレーションを与えてくれました。その時、大人になって、キム・ソンス博士のように尊敬される科学者になるという目標を立てたのです。

  • 第二のターニングポイント

中学生の頃まで、私は自分でテーマを決めて書くことに没頭していました。様々な社会問題や制度に取り組みながら、単に問題を受け入れるのではなく、解決策を模索し、その経験を記録したのです。その過程で、「表現のボトルネック」の問題に直面しました。生徒の中には、自分の考えを明確に表現するのが難しいと感じている子もいます。私自身、小学校の頃から文章に関わる様々な活動に参加し、この問題を認識していました。

中学・高校に進学した後、同じ興味を持った友人たちと一緒に活動する機会があり、「韓国青少年社会科学研究所」という名前で学術サークルを創立しました。これが私の人生の重要なターニングポイントの一つとなりました。

サークルは約20名のメンバーでスタートし、研究や討論を通じて社会問題やテーマについて深い理解を追求してきました。メンターの指導のもと、互いに意見を出し合い、様々なテーマについて探求する過程は、私たち全員に大きなインスピレーションを与えました。

サークル活動は徐々に拡大し、小さな集まりが2年後には全国に100を超える連合サークルに成長しました。このようなネットワークをもとに、2014年から学術大会(KSCY)の開催を開始し、半年に1回、計18回開催しました。当初は小規模だった大会は、時間が経つにつれて数千人あまりが参加する大規模イベントへと発展しました

学術大会を開催するにあたり、文章力そのものよりも、学生が自分の考えを継続的に表現できるようサポートすることを重要視しました。参加者は、大会期間中、自分の関心がある分野について研究し、その結果をレポートの形で完成させる経験を通じ、次回の大会への参加意欲を燃やしました。

また、同じような関心を持つ友人同士が互いに協力して起業したり、キャンペーンを設けるなどしたことは、若者が社会の変化を主導するきっかけにもなりました。このような活動は、若者たちに大きな誇りと共に、持続可能な発展の原動力を提供しました。

イ・セヨン代表が高校時代に設立し、Wrtn Technologiesの起業メンバーが約8年間ボランティア活動を行った韓国青少年学術大会KSCYの全景。ⓒWrtn Technologies 

  • 第三のターニングポイント

2020年、新型コロナウイルスのパンデミックが本格化し、予期せぬ変化の時期が訪れました。その年の初回の学術大会のために大学のキャンパスまで貸し切ったのですが、安全のために大会直前に中止せざるを得ませんでした。当時は新型コロナウイルスの流行が長期化するとは予想していませんでした。

学術大会は1回開催するたびに数億ウォン(数千万ウォン)の費用が発生します。協賛金を募集したり、参加者に参加費の一部を徴収したりしていましたが、夏季大会も開催できなくなり、払い戻しの負担を負うことになりました。

払い戻し金問題をどう解決するか悩んでいたところ、オンライン課外サービスの提供というアイデアを思いつきました。「KSCとのオンラインクラス」との名称で始まったこのプログラムは、参加者にZoomとGoogle Docsを活用してもらい、学術大会の経験をオンラインで提供する形で運営されました。この方式は、多くの若者たちから肯定的な反応を引き出し、払い戻し問題の解決に大いに役立ちました。

それだけでなく、一緒にいた仲間の継続的なサポートのおかげで、3ヶ月で払い戻し金を全額返済することができました。この過程で、オフラインカンファレンスをオンラインプラットフォームに転換する作業も並行して行われるようになり、その年の夏から具体化されました。結果的に、オンラインで開催される学術大会は、より幅広い参加と持続可能性を確保する新しい形として定着しました。

私たちは、ライティング教育の一般的なアプローチとは異なる道を選びました。従来の教育方式が序文の書き方や研究の文体規則などに焦点を当てていたのに対し、私たちは学生と直接対話して彼らが本当に表現したいことを把握し、それをサポートする方法を採用しました。このようなアプローチは、学生が語彙の選択などにとらわれ、文章を書くのに苦労する問題を解決するのに大いに役立ちました。生徒が自分の考えやアイデアを自由に表現できるようになることで、より重要な内容に集中できる環境を作ったのです。このような変化は、オフラインからオンラインへの移行過程でも重要な役割を果たし、技術と人間の相互作用で発展させる必要性を確認できました。

ⓒWrtn Technologies

  • 第四のターニングポイント

払い戻し金をすべて返金し、プラットフォームをオンラインに転換した後、産業と技術がどのように相互作用できるのかを考えていたところ、韓国のゲーム会社で働く、ある大会ボランティアから当時流行していた技術に関する話を聞きました。彼は、生成型AI技術を活用すれば、私たちが追求していた目標を実現できると提案しました。このアイデアを聞いてから、様々なAIモデルを調査し、どのように活用できるかを模索し始めました。

2020年半ば、OpenAI(オープンエイアイ)がGPT3のクローズベータテストを実施する時でした。私たちのチームは、公益的な目的でこの技術を使用したいと思いOpenAIに連絡し、最終的に使用許可を得ることができました。これをきっかけに、生成型人工知能技術を活用し、新しい表現方法を模索する実験を本格的に開始し、2021年4月の創業につながりました。これが四つ目の大きな転換点になりました。

私自身、個人的な関心からスタートして起業に至ったことから、仕事と趣味が一致した生活を送っていると思っています。小学生の頃から表現の限界を広げることに興味があり、中学・高校時代には、このテーマについてより多くの人と一緒に議論するためのカンファレンスを設けました。新型コロナウイルスのパンデミックが発生したことで、対面イベントをオンラインに切り替える契機となり、最終的にこのような経験がWrtnという形になりました。

2021年4月に正式に設立したWrtnは、最初はライティングツールを提供するサービスとしてスタートしました。以来、安住することなく、生成型AI技術を核として、製品の方向性を継続的に修正・発展させてきました。

「Startup Playground」のオープニングデーイベントの様子ⓒPlatum

  • Wrtn Technologiesの始まりと挑戦

現在、WrtnはChatGPTやClaude(クロード)、Llama(ラマ)などの高性能LLMを無制限に使用できるAIポータルサービスを提供しています。最近では「Compound AI Systems(コンパウンド・エイアイ・システム)」を適用しています。LLMに検索できる能力、韓国人が好むウェブデータ、ユーザーが以前どのような質問をしたかについての情報を入れることで、より優れた回答を作成することができます。Wrtnはそれが可能な統合サービスを作っています。

創業初期から、技術の転換期は初期の先取りとポジショニングが重要だと考えていました。

私たちは、インターネット、モバイル技術の転換期に匹敵する、あるいはもっと大きな技術の転換期がAI時代に来ると予測しています。そのため、Wrtnはインターネット、モバイル技術の変化と同様に、AI時代がもたらす技術的な転換期に備えています。そのような激動期に、グローバルサービスの誕生とともに、ローカライゼーションを通じて初期ユーザーを確保し、エコシステムを守るためのサービスが登場しました。NAVER(ネイバー)やKakao(カカオ)のような韓国内のサービスと日本のヤフージャパン、LINE(ライン)などがスーパーアプリに成長した過程を見れば分かります。

また、日本が重要な市場であると判断し、初期から日本市場に進出し、韓国と日本で同時にサービスを運営しています。4月現在、300万人ほどのユーザーがWrtnのサービスを利用しています。1年の間に300万人のユーザーを集め、昨年12月に200万人を突破し、第1四半期で300万人に達する急成長を遂げています。

投資の酷寒期にもかかわらず、Wrtnは可能性が認められ、2021年6月にシード投資を受けた後、2022年11月にプレA投資を受けました。昨年の夏には150億ウォン(約17億円)の投資を受け、現在、累積190億ウォン(約21億6,000万円)規模の資金調達をしました。

2020年に初めて生成型人工知能(AI)技術に触れ、これによりユーザーインターフェースが大きく変わるとの見通しを立てました。当時、この技術は高価であり、限られた人たちしかアクセスできなかったにもかかわらず、その影響力を考慮すると、価格が急激に下落することが予想され、現在、その予測が現実のものとなりつつあります。

Wrtnを利用する全ユーザーの57%が10代と20代で構成されています。当初はユーザーの約20%が教師であり、特定の職種でこれほど多くの割合を占めるのは珍しいと言えます。教師の間で広く使われるようになり、Wrtnは単純な学習ツールを越えて、課題支援、授業補助、日常的な質問検索に至るまで、様々な方面でその活用度が高まっています。今では商取引やエンターテイメント分野までその範囲を広げています。

また、「Wrtn Studio」という名前の制作ツールを通じて、ユーザーはパーソナライゼーションされたAIツールやAIエージェントを作る機会を得ました。ここでは、教師を含む様々なユーザーが自分だけのチャットボットやAIキャラクターなどを作成することができます。

アメリカにある「Character.AI(キャラクター・エイアイ)」という会社は、平均してユーザーがサービスに滞在する時間が2時間に達するとしています。これはユーチューブと同様のレベルで、AIとの会話によるエンターテイメント消費がどの程度であるかを示す例です。Wrtnはこのような現象に注目し、現在、様々な実験を行っています。

Wrtnは、AIと人間の相互作用を越え、ユーザー経験を豊かにし、新たな可能性を模索する段階にあります。このような実験的アプローチは、プラットフォームの活用範囲を大きく広げると期待されています。

Wrtn Technologiesが昨年5月30日に開催した生成AIカンファレンス「Generative AI Asia 2023」の様子ⓒWrtn Technologies

  • 生成型AI事業で得たインサイト

現在、私たちは、生成型AIがもたらす様々な機会と同時に、リスクを内包する新たな市場環境に直面していると考えています。このような状況は韓国だけでなく、様々な国の政府が認識しています。

2022年11月、ChatGPTの登場により、生成型AI分野が本格的に拡大し始めました。リリース直後の5日間でユーザー数が100万人を突破し、リリース後2ヶ月後には1億人のユーザーを募集するなど、大衆の高い関心を集めました。LLMを開発する企業だけでなく、このようなモデルに基づいた応用製品を開発する様々なユニコーン企業が生まれており、この分野の高い成長可能性と、市場の初期にも関わらず多くのユニコーン企業が登場し、市場を主導しています。

インターネット時代の1997年から1999年の間に、私たちの生活を変えた様々なサービスが次々と登場しました。この時期と現在を比較すると、多くの類似点を見つけることができます。90年代初期のインターネット時代のように、生成型AI市場に本当に多くの企業やサービスが登場する大爆発の時期です。

インターネット時代の初期にも、本当に多くのアイデアが実用化しました。当時、私たちが今使っているソーシャルネットワークとか、NETFLIXやYouTubeのようなビデオストリーミングサービスがすべて提示されました。ただ、コストの問題、技術インフラの不足、デバイスの限界などの外的要因により、市場から姿を消しました。もちろん、生き残ったいくつかの企業は、今日では巨大企業になりました。

このモデルにかかるコスト、学習にかかるコストが非常に高いので、これでいったいどうやってビジネスをするのかという質問も多く受けました。私たちがいつも主張していたのは、すぐにコストは下がるということでした。実際、Wrtnの創業から2年の間にものすごく下がりましたし、この傾向は今後も続くと思います。実際、GPT3は2年前に比べて200~300倍近く安くなりました。

いくつかのLLMモデルのコストは、電気レベルまたはクラウドのコストレベルまで急激に下がると予想しています。コストは下がりますが、種類はどんどん増えていくでしょう。それぞれ特徴があるモデルが出てきていますが、その過程でそのモデルを総合する形のビジネスが登場するでしょうし、このような流れはますます加速すると予想されます。インターネット、モバイルがそうであったように、遅かれ早かれAIはすべてのソフトウェア(SW)で基本的に活用されるでしょう。今後、企業は生成型AIをどの領域に先に適用させ、売上などの効率化目標を達成できるかを考えていくでしょう。巨大な技術転換期が到来し、コストはこれからどんどん下がっていき、インターフェースが完全に変わるでしょう。

PC、インターネット、モバイル時代を象徴するアイコニックな製品があります。それらの製品は、人と機械のコミュニケーションの方法を根底から変えました。生成型AIも同様でしょう。ChatGPTがきっかけとなったこのインタラクティブサービス、インターフェースはますます自然なものになるでしょう。今のような初期市場において挑戦してみる価値がある領域は、インターフェースの最前線を占めることだと思います。Wrtnが無料でサービスを提供し、様々なサービスを一箇所に集め、ローカリゼーションに力を入れている背景でもあります。

インターネット時代にはGoogle、NAVER、YahooがPCブラウザの最初の画面を占め、モバイル時代にはKakao Talk、LINE、WeChatのようなサービスがスマートフォンの最初の画面を占めるようになりました。それをベースに様々なサービスにつながるように拡張してきたのです。AI時代も同じようなことが起こると思います。アメリカの作家マーク・トウェインの名言に「歴史はそのまま繰り返されないが、その流れは繰り返される」という言葉があります。90年代のインターネット時代、2000年代後半のモバイル時代のように、AI時代の最初の試みはすでに行われています。結局、創業者も気づかなかった堀を築いたサービスだけが生き残るでしょう。

  • Wrtnが目指す方向性

私たちは、ローカルアグリゲーターとポータルを汎アジア的なものにすることを目指しています。Wrtnは創業以来、今まで「Chasm(キャズム)」を越えて「Mass(マス)」に移行できる製品が何であるかを考え続けています。CESイノベーション賞を受賞した最初の製品「Wrtn Training(ルートントレーニング)」はシンプルなツールでした。Wrtn Trainingは、ユーザーが自分の考えを一本の文に完成させる過程を繰り返し、ライティング練習を経験できるサービスです。そこからピボットして、会話型AIサービスを韓国で一番最初に出し、検索と併せてキャラクターと会話できるサービスも提供しています。Naverカフェやブログのように自分だけのエージェントを作ったり、AIコミュニティを作れるようにする知的ツールまで提供し、一つの大きなポータルエコシステムを構築している段階です。

私たちは「第2のJasper(ジェスパー)」を目指しています。Jasperは設立から間もない状況にもかかわらず、その可能性を認められ、2兆ウォン(約2,273億6,000万円)以上の企業価値を受けた生成AIスタートアップです。初期のチームメンバーと共に共有していた内容は、「今のサービス形態は決して最終的な姿ではない」ということです。私たちの製品の最終形態は、環境で生き残り、最も多く通用する形に変わり、安住することなく製品の変化を遂げなければならないということでした。それが私たちがピボットを続ける理由です。

カニは生態系で生き残るために有利な形に進化してきました。Wrtnもビジネス、製品を開発しながら、カニのように最終的な姿を模索する旅を続けています。その過程で苦しい試練もありましたが、乗り越え続けていきたいと思っています。

「Startup Playground」のオープニングデーイベントの様子ⓒPlatum


(以下、イ・セヨン代表との一問一答)

-韓国に多くのAI企業とサービスが登場し、発展も進んでいるが、生成型AIの基礎となるファウンデーションモデルを開発した企業は一つもないという内容のスタンフォード大の「AIインデックス2024」レポートがある。実際、韓国企業の大半がChatGPTを活用してビジネスを行っている。外国企業の価格政策の変化に振り回される可能性がある。Wrtnはこのような状況を乗り越えられる戦略があるのか?

ファウンデーションモデルを作る韓国企業がないわけではない。NAVER(ネイバー)のHyperCLOVA(ハイパークローバ)、Kakao(カカオ)のKoGPT(コジーピーティー)というモデルが既にある。また、Upstage(アップステージ)のようなスタートアップはオープンソースベースのLLMを作っている。ChatGPTが独走しているように見えるが、それに準ずるLlama(ラマ)、Claude(クロード)、Gemini(ジェミニ)がある。OpenAI出身者が創業し、OpenAIの対抗馬と呼ばれるAnthropic(アンソロピック)というスタートアップも注目されている。

資金力を持つ企業が天文学的な資金を投入して、最終的に汎用人工知能(AGI)を作り、映画「アイアンマン」に出てくるジャーヴィスのような存在を開発することだ。それぞれのプレイヤーごとに戦略があると思う。OpenAI、Google、Metaがやっているような形ではないにしても、韓国でも様々なファウンデーションモデルの試みが行われている。

まだ、生成型AI競争の勝者は確定していない。技術的な障壁は下がり続けており、モデルの多様性が出てきている段階だ。インターネットのコストが初期よりはるかに安くなったように、普及し続け、オープンソース市場が大きくなれば、外国企業の政策変更が大きく懸念される状況にはならないと思う。特定のモデルが急にコストを上げて暴利を取るような状況はないだろうと予測している。

Wrtnはトラフィックが多いため、アジア圏の様々なモデル開発会社から多くの提案を受けている。自然に、市場の論理に従ってコストが下がっている。その過程で一部のコストは我々が負担するが、いつか無料になる市場であるため、ユーザーの先取りを優先する戦略を進めている。

-大衆に生成型AIがますます身近になりつつある。技術企業だけでなく、一般消費者との接点が多いB2C企業もインハウス開発チームをセットアップし、生成型AIを定着させようとしている。Wrtnが考える競合他社の範囲はどこまでで、現状はどうなっているのか。そして、現在スケールアップが進行中だが、どの程度進んでいるのか。

利用者がAIと初めて会話をするときに接点をつくることがポイントだ。同種のサービスよりも、既存の検索ポータルやメッセンジャーが競争相手になるだろう。そちらの利用者をAIの方に呼び込む必要がある。まだ生成型AIをポータルやメッセンジャーのように活用する人は多くないが、時間が経てば自然に500万、1000万、ひいては5千万の国民が使うサービスになると思う。

私たちが最初にサービスを開始したときに予想し、見通したことがある。AIポータルというものが可能で、AIがインターフェースを変える転換期的な技術だということだ。それが正しければ、バーティカルスーパーアプリより速く成長すると思った。幸いなことに、予想どおりに推移しており、成長グラフもその分上昇している。現在300万人が我々のサービスを利用しているが、経済活動人口の10~15%程度だ。Chasmを越えてmesへ向かう重要な分岐点に立っていると思う。

私たちの目標は、今年600万人程度のユーザーを集め、来年には1000万人以上が利用するサービスとすることだ。AIが大衆化された時代に、一番最初にAIと会話をする場所、または最初に会話を交わすサービスになることを目指している。

信用保証基金のチェ・ウォンモク理事長が挨拶をしている。ⓒPlatum

信用保証基金ソウル西部スタートアップ担当のチェ・ジュニョク次長が投資審査の視点について講演している。ⓒPlatum

韓国エンジェル投資協会のコ・ヨンハ会長が「起業エコシステムが国家競争力を左右する」の演題で講演している。ⓒPlatum



<信用保証基金の主催で4月22日にGoogle for Startups Campusで開かれた「Startup Playground」のオープニングデーイベントの様子 ⓒPlatum>

原文:https://platum.kr/archives/226627



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記事を書いた人
Platum

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