生き残りを目指して始めた事業を、年商10億ウォン規模に育て上げるまで

マーケティングPT #78.Pasaの成長ストーリー
医療機器、高価格、複雑な課題、一人ひとりに合わせたオーダーメイド製品

マーケティングの観点から見ると、「難易度が高い」とされる要素をすべて備えながらも、年間のリピート売上で10億ウォン(約1億円)を達成したブランドがあります。累計顧客数は2万人を超え、サブスクリプションの解約率は5%未満。着実な成長を続けています。

オーダーメイドのいびき軽減装置をサブスクリプション形式で提供するブランド、Pasa(パサ)です。 

最近はサイト訪問者数が減少している一方で、取引額は着実に伸び続けています。

 「オンラインで、68万ウォン(約7万円)のオーダーメイド型いびき軽減装置を非対面で販売する。」

この難易度の高いビジネスを見事に成長させてきた、The sleep factory(ザ スリープファクトリー)の代表、パク・ジュニョク氏に、その歩みを伺いました。

Q.ユニークなサービスですね。Pasaはどのようにして始まったのでしょうか。

もともと私は、オンラインマーケティング会社を経営していました。主に医師や弁護士など、専門職の方々のマーケティングを支援する会社です。歯科医師である父の歯科医院のマーケティングも、私が担当していました。

父は長年にわたり、顎関節や咬合の分野を研究し、さまざまな治療法を開発してきました。私は父の専門性と強みを誰よりも理解していたので、顎関節・咬合治療の価値をより多くの人に知ってもらうことに力を注ぎました。 

そのなかで興味深いことが起こりました。咬合治療を受けた患者の満足度が非常に高く、自発的に多くのレビューを寄せてくださったのですが、その中に「いびきが減った」「睡眠の質が良くなった」といった声が数多くあったのです。

こうした患者の声をきっかけに、父の歯科医院ではいびきや睡眠に関する研究をさらに深めるようになりました。そして、その流れの中で「Pasa(Doctor Park’s Anti Snoring Appliance)」というブランドが誕生しました。

Q.創業当初は、約200万ウォン(約21万円)の装置を求めて、歯科医院に開院前から人が並ぶほどだったと聞きました。当時はどのようなマーケティングをされていたのでしょうか。 

当初の製品は、現在のように体系化されたサービスではありませんでした。父が運営する歯科医院を基盤に提供していた、高価格帯のオーダーメイド装置です。現在のPasaは、より多くの方が気軽に試しやすいよう、サービスとして構造化し、磨き上げた形になっています。一方で当時の製品は、限られた環境の中で、専門性と希少性を強みに提供していたものでした。

振り返ってみると、できることはほとんどすべて試しました。オンライン広告はもちろん、新聞記事やラジオ、地域の主要地点に設置する横断幕広告など、オンラインとオフラインのさまざまなチャネルを組み合わせて認知度を高めました。また、プロバスケットボールチーム電子ランドのスポンサーを務めたり、韓国代表選手にPasaを提供したりもしました。チアリーダーと一緒に「いびきにはPasa」と書かれたボードを掲げてPRしたこともあります。

電子ランドのホームゲーム会場でのPR活動

さまざまなマーケティングチャネルを活用して問い合わせ数を増やすこと以上に、私が重視していたのは、お問い合わせいただいた顧客一人ひとりとの相談でした。ほとんどすべての患者と1対1で直接向き合い、丁寧に説明しました。信頼していただくために、「満足いただけなければ返金保証」という、当時としてはかなり思い切ったキャンペーンも打ち出しました。

こうした取り組みが口コミにつながり、既存の顧客からの紹介で来院される方の割合が非常に高くなりました。海外からわざわざ訪れる患者も少なくありませんでした。

当時、開院前から患者が並ぶほどの人気を集めることができた理由を、一つに絞って説明するのは難しいと思います。製品そのものの独自性、歯科医師が1対1でオーダーメイドすることへの信頼、コミュニケーションにおける誠実さ、そして積極的な認知拡大施策など、さまざまな要素が重なった結果です。また、いびき治療機器であるCPAP(持続陽圧呼吸療法装置)が保険適用になる直前という市場環境も、追い風になっていたと思います。

Q.CPAPが保険適用になってから、状況は変わりましたか。

CPAPが保険適用になった途端、驚くほど売上が落ち込みました。80%以上減少したと思います。当時、父の歯科医院は全国でもトップクラスの売上を上げていましたが、ほぼ一瞬で業績が大きく落ち込みました。院内の仕組みも、いびきや睡眠時無呼吸症候群の患者を中心に構築していたため、市場環境の変化によって従来のやり方では立ち行かなくなっていました。

そこで立ち上げたのがスタートアップです。病院で患者を待つのではなく、製品とサービスを直接顧客に届けられる仕組みをつくる必要があると考えたのです。

Q.非対面サービスへ移行するにあたり、製品価格を68万ウォンまで引き下げられたそうですね。どのようにして価格を4分の1まで下げることができたのでしょうか。

実際のところ、私たちのような事業にとって価格を下げるのは、想像以上に難しいことです。まず、市場規模がそれほど大きくないため、大量生産によるコスト削減ができません。だからといって、生産設備に大規模な投資を行うのも簡単ではありません。

さらに、オーダーメイド製品である以上、専門性と情報セキュリティの両立が求められるため、人件費も高くなります。製品を知ってもらい、実際の購入につなげるまでのマーケティングコストも小さくありません。加えて、医療機器の認証取得や維持にかかる費用、カスタマーサポートの運営費など、本当に次々とコストが発生します。

コストを抑えるために、まず製造工程の大部分を3Dプリンターによって自動化しました。以前は一人ひとりの患者に合わせて手作業で製作していたものを、自動化するまでにはかなりの試行錯誤がありました。顧客に満足していただける品質を実現する設計アルゴリズムを開発するために、1,000個以上の試作品を作り、自分自身で装着テストを繰り返しました。

また、医療機器の認証取得も大きな壁でした。多くの小規模な医療機器メーカーが、世に知られることなく撤退してしまう大きな要因の一つが、この認証プロセスだと思います。準備から審査対応、認証維持に至るまで、想像以上の時間と費用がかかります。私はコストを抑えるために、このプロセスを外部に頼らず、自分で一つひとつ対応しました。当時は OpenAI の ChatGPT のようなAIツールもありませんでした。今なら30分で終わる作業に、1か月近くかかることも珍しくありませんでした。ほとんど眠れない日々が続きました。

Q.マーケティングコストの削減にも、かなり取り組まれたのではないでしょうか。

マーケティング面でも、コストを抑えるために徹底的に工夫しました。お金をかける代わりに、自分たちの時間を投下してできることを最大限増やしたんです。幸い、私はこれまでずっとマーケティングに携わってきたので、このやり方でも比較的早く成果を出すことができました。

現在もオフィス内には、広告用のクリエイティブやコンテンツ用の画像・動画を撮影するための小さなスタジオを設けています。マーケティングに必要な素材の多くは、私と少人数のチームが企画から撮影まで一貫して手がけています。採用や外注にかかるコストをできるだけ抑えることも、原価を下げるうえで重要な取り組みの一つです。

オフィス内に設けたマーケティングコンテンツ用の撮影スペース

Q.現在は月額2万ウォン台のサブスクリプションサービスも展開されていますが、これは利用ハードルを下げるための施策だったのでしょうか。

はい、その通りです。導入のハードルを下げることが目的でした。私たちの製品は、実際に使ってみて初めて価値を実感していただける商品です。使ってみることで、「なるほど、だから使い続ける人が多いのか」と納得していただけます。そのため、まずは気軽に試していただける環境を整えることが何より重要だと考え、サブスクリプションサービスを導入しました。 

顧客が負担なく始められる仕組みをつくるため、できる限りの工夫をしました。製品には自信があったので、保証金は0円に設定しました。60万ウォンを超える一人ひとりに合わせたオーダーメイド製品を、保証金なしで、ほぼ無料に近い費用で1か月間試していただき、そのうえで継続するかどうかを顧客自身に判断していただける仕組みにしたのです。また、利用開始後も満足いただけなければ、いつでもすぐに解約できるようにしました。

このサブスクリプションモデルを導入してから、コンバージョン率は明らかに向上しました。製品に満足された方は、そのまま自然に継続利用されています。現在、このサービスは5人のチームで運営していますが、リリースから18か月でARR(年間経常収益)は10億ウォン(約1億円)を突破しました。

割引特典を適用すると、初月5,900ウォン(約600円)で始められるサブスクリプションサービス

Q.いびきや歯ぎしりは、本人も不快に感じますが、実際には周囲の人のほうがより大きな負担を抱えることの多い、複雑な悩みだと思います。この市場の顧客には、どのような特徴がありますか。

これは、私たちのチームが最も深く考えているテーマの一つです。おっしゃる通り、いびきや歯ぎしりは本人にも影響がありますが、実際には家族や配偶者、同居している方のほうが、より大きなストレスを感じているケースが少なくありません。そのため、一般的な消費財のように、「一人の悩みを解決する商品」として単純に捉えることができないのです。

私たちは顧客を大きく2つのタイプに分けています。

1)自分自身の悩みを解決するために、製品を利用する方
2)家族や同居人のために、製品の利用を始める方

データを見ると、継続率が高いのは1のタイプの顧客です。一方で、2のタイプの顧客はマーケティング上は比較的獲得しやすいものの、解約率も高い傾向があります。

つまり、この市場の最も難しい点は、「最も困っている人」と「実際に製品を継続して使い、慣れていく人」が必ずしも同じではないことです。

広告クリエイティブにも一部反映された、2)のターゲット層に向けたメッセージ

Q.そうした顧客特性は、マーケティング戦略にどのような影響を与えましたか。

「必要性を感じている人」と「実際に製品を使用する人」が異なる場合、どうすれば実際の使用者本人にも問題を認識してもらい、継続して使う理由を感じてもらえるか。この点について、私たちは一貫して考え続けてきました。その中で生まれたのが、Pasaのいびき分析アプリです。

このアプリでは、睡眠中の音声データを収集・分析し、自分のいびきがどの程度深刻なのかを直感的に確認できます。実際に自分のいびきを録音して聞くこともできます。現在はさらに機能を拡張し、睡眠の質を測定したうえで、その改善に向けたソリューションを提案できるように進化しています。まずアプリを利用し、その後に装置を導入する方もいれば、装置を利用した後にアプリを併用する方もいます。

私たちが重視しているのは、ただ一つです。Pasaのサービスを利用したことで、自分のいびきや睡眠の質がどれだけ改善したのか、そしてその状態がどの程度維持されているのかを、顧客自身が簡単に確認できるようにすることです。これは単なるマーケティング施策ではありません。顧客の根本的な悩みを解決し、継続利用を促すための本質的な仕組みだと考えています。

Pasaが自社開発したアプリ

Q.この市場で長く事業を続けてこられましたが、その間にさまざまな成長施策を試されてきたと思います。特に成果につながった取り組みがあれば教えてください。

最も大きな成果につながったのは、顧客の購入方法そのものを変える実験でした。通常販売から始まり、「100%返金保証付き販売」、さらに「無料体験後にサブスクリプションへ移行するモデル」へと販売方法を変えていく中で、顧客が増えるスピードは明らかに速くなりました。

広告面では、当社のデザイナーが制作した漫画形式の素材が大きな成果を上げた時期もあります。その期間は約3か月にわたり、顧客獲得コスト(CAC)が80%以上低下するほど高い効果がありました。

また、オーダーメイドの医療機器という商品の特性上、創業当初から自社ECサイトを構築し、顧客とのコミュニケーションチャネルをできるだけシンプルにしたことも重要でした。顧客の反応を直接確認しながら、製品やメッセージを素早く改善できたことが、成長につながったと考えています。

Q.Pasaチームの最大の成長の原動力は何だとお考えですか。

私たちの最大の成長の原動力は、特定の戦術や施策ではなく、「うまくいくまでやり抜く力」だと思っています。トレンドやアルゴリズム、マーケティングチャネル、技術は常に変化しています。AI技術は驚くほどのスピードで進化していますし、顧客が求める満足の水準も年々高くなっています。

そうした変化の激しい環境の中で、状況に素早く適応し、その時々に解決すべき課題に最後まで向き合い続けることが、成長につながると考えています。ありがたいことに、創業初期から加わってくれたメンバーたちは、まさにそのような姿勢を持った人たちでした。だからこそ、ここまで事業を伸ばすことができたのだと思います。

今後も、変化する環境に柔軟に対応しながら、顧客が本当に求める製品を適正な価格で提供し、信頼を得るために必要なことを最後までやり抜く。その力こそが、私たちにとって最も重要な成長の原動力であり続けると考えています。

Q. 「非対面」で「オーダーメイド」の「医療機器」を販売するブランドには、購入につなげるために非常に大きな信頼の蓄積が必要だと思います。創業当初、信頼を築くためにどのような取り組みをされたのでしょうか。

68万ウォンという価格の、しかもオーダーメイドの医療機器を、初めて知ったブランドからオンラインで購入するというのは、顧客にとってかなりハードルの高いことです。今よりも認知度が低かった創業初期は、なおさら購入をためらう方が多かったと思います。

それでも、当時から私たちを信頼して選んでくださる顧客が少数ながらいらっしゃいました。私たちは、その方々にできる限り丁寧に対応することを何より大切にしていました。定期的にご連絡し、製品を問題なく使えているか、不便な点はないかを確認していました。何かトラブルがあれば、私自身が真っ先に対応し、できるだけ迅速に解決するようにしていました。

創業当初のメンバーは、私と高校時代の同級生の2人だけでした。そのため、顧客対応のほぼすべてを自分たちで行っていました。その経験を通じて、顧客がどのような点に不安を感じるのか、どのような場面で不満を抱くのか、何がきっかけで不信感を持つのかを、非常に具体的に学ぶことができました。この経験は、今でもPasaの最大の資産の一つだと考えています。

Q.当時の経験は、現在の事業運営にも活かされていますか。

現在は、私がすべての顧客と直接やり取りすることはできません。そのため、創業当初に自分自身が現場で学んだ、顧客の不安や不便を感じるポイントを、チーム全体で共有し、同じ視点で対応できるようにすることに、より力を入れています。

どれだけ経験豊富なベテラン人材であっても、Pasaというブランドでは、すべてが初めての経験になり得ます。だからこそ、私たちは開発、マーケティング、カスタマーサポートといった部署の枠で分けて考えていません。すべてのメンバーが、それぞれの立場でPasaの顧客の視点に立ち、課題を解決し、製品とサービスをより良いものにするために取り組んでいます。

私は、ブランドへの信頼は、華やかなキャッチコピーや広告によって生まれるものではなく、顧客が実際に感じた不便に対して、誠実に向き合うことで築かれるものだと考えています。創業初期に私たちが行っていたことも、本質的にはそこにありましたし、今もその姿勢は変わっていません。

個人的に、もう一つ印象深く感じていることがあります。これまで数多くのデモデイやIRイベントに参加し、長い間、資金調達に取り組んできましたが、なかなか投資を受けることができませんでした。その後、Pasaの製品を実際に利用してくださっていた顧客でもあった投資家の方と出会い、投資を受けることができました。そして、ここまで事業を成長させることができました。これもまた、顧客との間に積み重ねてきた信頼と、粘り強い対応が評価された結果だと考えています。

Q.1年以上サブスクリプションを継続している顧客の割合が65%を超えていると伺いました。その理由をどのようにお考えですか。

私はサブスクリプションサービスを提供する立場であると同時に、普段からさまざまなサブスクリプションサービスを利用している一人のユーザーでもあります。その立場から感じるのは、継続率を戦略だけで引き上げるには限界があるということです。結局のところ、最も重要なのは製品そのものの価値です。最初の利用時点で満足していただき、利用中に生じた不便に対して適切に対応できれば、顧客が解約する理由はほとんどありません。

私たちは、「継続率を高めるためのテクニック」や、「解約しようとする顧客を引き止める仕組み」を設計することには、あまり力を入れてきませんでした。それよりも、「顧客にとって本当に必要なものを、どうすればより納得感のある形で提供できるか」を一貫して考えてきました。その結果として、短期的には会社側が不利になる判断をすることもあります。しかし、長期的には、そうした姿勢こそが顧客の信頼につながり、高い継続率として返ってくると考えています。

Q.マーケティング代理店を運営しながらクライアント企業のマーケティングを支援した経験と、自社事業のマーケティングを自ら担う経験の両方をお持ちですが、どのような違いを感じましたか。

現場で活躍されている代理店の方も多いので慎重にお話ししたいのですが、私は、マーケティング支援と自社事業のマーケティングはまったく別の仕事だと考えています。

The sleep factoryを立ち上げた際、それまで運営していたマーケティング代理店を整理し、自社ブランドのPasaに専念することにしました。実際に取り組んでみて感じたのは、一つのブランドにすべての時間と資源を注ぎ込んでも、目に見える成果を出すのは決して簡単ではないということです。実際、すでにローンチしたにもかかわらず、マーケティングに十分着手できないまま在庫として残っている商品もあります。自社事業では、一つひとつの意思決定や実行に注ぐ熱量の大きさも、失敗したときに背負う責任の重さも、代理店時代とはまったく異なります。

創業してから、「最高のマーケティングとは何か」に対する考え方も大きく変わりました。結局、最高のマーケティングとは、優れた製品をつくり、それをより良い形で、納得できる価格で顧客に届けることだと思います。高度な広告運用のテクニックや華やかなコンテンツ以上に、顧客に本当に満足していただける製品と体験を提供することのほうが、はるかに強力なマーケティングであることを、日々実感しています。

創業者にとって、マーケティングは単にいくつかの指標を改善することではありません。製品そのもの、ブランドのあり方、業務運営、顧客対応など、すべてがマーケティングの成果に直結しています。すべてがつながっているからこそ、現在は、コアメンバー全員が同じ価値観を共有しながら仕事ができるようにすることにも、力を入れています。単に「良いマーケティング」を追求していた代理店時代とは、ものの見方そのものが大きく変わりました。

Q.起業してから数多くの意思決定をされてきたと思いますが、創業当初に戻れるとしたら、もう二度としないと考えている判断はありますか。

これまで、本当にさまざまな意思決定の失敗を経験してきました。その中で真っ先に思い浮かぶのは、採用に関する判断です。創業初期の私は、華やかな経歴を持っていたり、有名なプロジェクトで実績を上げた経験があったりする方を、高い報酬で迎えれば、会社の成長に大きく貢献してくれるはずだと考えていました。そのため、そうした採用を何度も試みました。しかし、結果としては、ほとんどのケースで期待していたような成果にはつながりませんでした。

もちろん、成功した採用もあります。韓国の起業支援プログラムの青年創業士官学校で出会ったある起業家の方に、当社のCTOとして参加していただきました。当時、その方はAI教育サービスを開発しており、私とは6か月間、ほぼ毎日のように夜遅くまで議論を重ねながら、ともに悩み、ともに成長してきた仲間でした。当社に加わってからの2年間、彼は私とともに会社の本質的な成長を力強く牽引してくれました。

振り返ってみると、最も重要だったのは、厳しい状況の中でも「必ずやり遂げる」という強い意志を持っているかどうかだったと思います。もちろん、華やかな経歴を持つ方々が真剣に取り組んでくれなかったという意味ではありません。皆さん、それぞれの立場で最善を尽くしてくださいました。ただ、スタートアップでは、「一生懸命取り組む」だけでは乗り越えられない局面が数多くあります。

だからこそ、創業初期の企業では、代表からインターンまで、役職や経験年数に関係なく、「何があってもやり遂げる」という強い意志を持つ人たちが、同じ目標に向かって進むことが何より重要だと考えています。実際、私を除く4人のコアメンバーのうち2人は、当社が社会人として初めて働く会社です。それでも現在、それぞれの持ち場で驚くほど高い当事者意識を持ち、自ら課題を見つけて解決してくれています。

Q.現在、米国進出も準備されていると伺っています。この挑戦も決して簡単ではないと思いますが、現時点で最も大きなボトルネックは何で、どのように解決しようとしているのでしょうか。

アメリカでは、いびきや睡眠時無呼吸の症状がある場合、多くの人がまず睡眠センターや耳鼻咽喉科を思い浮かべます。つまり、歯科を起点としたソリューションでこうした問題を改善できるという認知が、まだ十分に広がっていません。この認知の不足が、一つ目の大きなボトルネックだと考えています。

もう一つの課題は、患者と歯科医師をつなぐ仕組みです。韓国でも重要なテーマですが、アメリカ市場は規模がはるかに大きく、構造も複雑です。患者がどこから流入し、どのような経路で歯科医師とつながり、その中でPasaがどのタイミングで、どのようにコミュニケーションを取れば、「信頼できるソリューション」として受け入れてもらえるのか。その全体の設計を一から考え直す必要があります。

こうしたボトルネックを解消するために、現在は自社開発の睡眠管理アプリを軸に、アメリカ市場での検証を進めています。いきなり装置を販売するのではなく、まずアプリを通じて、ユーザー自身が自分の問題を認識し、データをもとに睡眠を管理する体験を提供しています。そのうえで、次のステップとして、患者と医師を自然につなげる仕組みを構築できるかどうかを検証しています。

現時点では、アプリを最初の接点として、市場参入の糸口を探っている段階です。

Q.1年後、そして10年後に、Pasaはどのようなブランドになっていると考えていますか。

現時点で具体的な内容を詳しくお話しすることは難しいのですが、1年後には韓国市場でかなり大きな変化をお見せできるのではないかと考えています。その変化を実現するために、現在は私よりもはるかに優れた能力を持つ方々と積極的にお会いし、新たな協力体制づくりを進めています。

10年後には、Pasaが世界中のどこにいても、誰もが簡単かつ迅速に利用できるグローバルブランドになっていてほしいと考えています。単に製品を販売する会社にとどまるのではなく、睡眠に関する悩みを抱えた人が最初に思い浮かべ、最も気軽に頼れるブランドになること。それが私たちの長期的な目標です。

Q.最後に、ここまで記事を読んでくださった読者の皆さんにメッセージをお願いします。

現在、Pasaのアプリは、どなたでも無料でご利用いただけます。これまでお話ししたように、このアプリは単にいびきを測定するだけでなく、睡眠の質そのものを改善するためのアプリへと進化を続けています。今後は、いびきに悩んでいない方にも楽しんでお使いいただける新機能も順次追加していく予定です。

質の高い睡眠と、すっきりとした気持ちのよい朝を手に入れたいと考えている方には、ぜひ一度試していただきたいと思います。

原文:https://www.innoforest.co.kr/report/471/

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