[分析方法および対象範囲]

▪️分析対象:「革新の森」が提供する514社のデータのうち、設立年(2010年以前設立および事業終了企業を除外)、大企業のベンダー企業、フランチャイズなどを除いた最終387社のスタートアップ

▪️投資区分(累計投資額基準)
– 
小規模:5億ウォン以下
– 中規模:5億ウォン以上〜50億ウォン未満
– 成長段階:50億ウォン以上〜100億ウォン以下 
– 大規模:100億ウォン超
 

▪️売上分類基準(損益計算書基準年度)
– A:2024年/ B:2023年/ C:2022年/ D:2021年以前

本分析では、釜山のスタートアップ387社を対象に、産業分野・ビジネスモデル・投資・売上の関係性を横断的に分析した。とりわけ投資と売上の関係に焦点を当て、成長の構造を読み解いていく。

「地域のスタートアップエコシステムの現状を、正しく捉えていますか?」

 地域革新は、大きなスローガンよりも、まずデータに基づいて現状を把握することから始まります。地域にどのようなスタートアップが存在し、どの分野が成長しているのか――その流れを捉えることで、政策、投資、協業の方向性が見えてきます。

「革新の森」は、地域のスタートアップエコシステムを可視化するデータを提供しています。主要企業の状況から分野別の強み、投資の動向まで、地域革新の企画に必要な根拠を一元的に確認できます。Connective works(コネクティブワークス)は、これらのデータを基に、自治体・研究機関・投資家と連携し、実践的な政策立案とエコシステム研究を進めています。現状分析から仮説構築、インタビューや現地調査まで――データが問いを生み、現場がその答えを補完します。さらに、エコシステム活性化施策の設計、誘致対象企業の選定、自治体の革新戦略策定へとつなげています。

地域革新を推進するうえで、革新の森とConnective worksが支援します。
データに基づいて課題を整理し、現場と連携しながら具体的な解決策へとつなげます。

1.地域スタートアップを捉える、もう一つの基準

スタートアップは一般的に、急成長や大規模な資金調達、そして市場拡大を前提としたモデルとして理解されがちです。しかし、こうした基準だけでは地域のスタートアップエコシステムを十分に説明することはできません。 釜山は、製造・物流・海洋といった伝統産業の基盤が強い都市です。この産業構造は、スタートアップの成長のあり方にも直接的な影響を与えています。新たな市場を創出するというよりも、既存産業の非効率を改善したり、運用方式を革新したりする形で企業が生まれている点に特徴があります。

この記事では、革新の森のデータをもとに、釜山のスタートアップエコシステムの成長構造を分析します。

2.プラットフォーム中心の外形と異なる成長構造

釜山のスタートアップを産業別に見ると、プラットフォーム企業の比率が最も高い。全387社のうち約200社がプラットフォーム型に分類されており、外見上はデジタルベースのスタートアップエコシステムが急速に形成されているように見える。

しかし、プラットフォーム企業をビジネスモデル別に細分化すると、B2Bの産業連携型が128社と最大の割合を占め、B2Cサービス型が41社、混合型が31社という構成になっている。

これは、釜山のプラットフォーム企業が、単純なB2Cサービスというよりも、物流や製造といった既存産業と結びつき、運営の効率化を図る方向に近いことを示している。

つまり、釜山のスタートアップはプラットフォームという形を取りながらも、実態としては産業との結合を軸に成長する構造を持っている。

3.プラットフォーム主体の構成と産業由来の成果構造

ビジネスモデル(BM)別に見ると、プラットフォーム/SaaS企業がエコシステムの外形を主導している。しかし、実際の成果という観点では、異なる傾向が確認できる。

この特徴は、売上が発生している企業を基準に見ることで、より明確になる。

プラットフォーム/SaaS企業213社のうち、売上が確認されている企業は170社。その中でプラットフォーム企業120社をビジネスモデル別に再分類すると、B2Bの産業連携型が86社と高い割合を占めている。

さらに、釜山スタートアップ全体におけるプラットフォーム企業のうち、B2B産業連携型の割合が約64%だったのに対し、売上が発生している企業ではその割合が約71.7%まで高まっている。

これは、プラットフォーム企業の中でも、産業課題の解決に特化したB2Bモデルの方が、より成果につながっていることを示している。また、製造・プロダクト系企業の売上発生比率がプラットフォーム企業より高い点も踏まえると、釜山のスタートアップエコシステムは、プラットフォームが拡張を担い、産業基盤型モデルが実際の成果を牽引する構造にあるといえる。

4.投資に依存しない売上基盤の形成

革新の森のデータに基づいて見ると、投資実績がないにもかかわらず売上を計上している企業が相当数存在する。

これらの企業の平均売上は約51億ウォン(約6億円)、中央値は約8.9億ウォン(約1億円)となっている。この数値は、一部の高売上企業が平均値を押し上げている一方で、多くの企業が中規模以下の売上帯に分布していることを示している。

5.投資構造:大規模集中ではない分散型

釜山スタートアップの投資構造を見ると、特定の資金調達段階に偏るのではなく、初期から中期にかけて広く分布している特徴がある。

具体的には、5億ウォン以下および5億〜50億ウォンの区間に投資が集中しており、100億ウォン以上の大規模投資は相対的に少ない。これは、一部企業への資本集中ではなく、エコシステム全体に資金が分散している構造を示している。

6.産業別の投資動向:問題解決型への集中

産業別に投資の流れを見ると、プラットフォームおよび製造・ハードウェア分野に資金が集まる傾向が確認できる。

これは、投資の方向性がB2Cサービスよりも、産業課題の解決領域にシフトしていることを示している。

7.売上と投資の関係:必ずしも連動しない関係性

売上が確認されている企業を基準に見ると、投資を受けた企業と受けていない企業の双方が、さまざまな売上レンジに分布している。

投資を受けた企業も、100億ウォン以上の売上帯に限られるわけではなく、10億ウォン以下や10億〜50億ウォンの区間にも幅広く存在する。このことは、投資の有無だけで企業の成長段階を単純に判断することが難しい点を示している。

8.売上上位企業の特徴

売上100億ウォン以上の企業に着目すると、B2B産業連携型のプラットフォームおよび製造・ハードウェア分野に集中する傾向が見られる。

[表4]売上100億ウォン以上企業における産業別投資規模分布(2024年)

内訳を見ると、B2B産業連携型プラットフォームが最も高い比率を占める一方、B2Cサービス型プラットフォームの比率は相対的に低い。また、製造・ハードウェア企業は投資規模の各区分にわたって分布している点が特徴である。

9.総合:釜山スタートアップの成長モデル

以上の分析を踏まえると、釜山のスタートアップエコシステムは、一般的に想定される「投資主導の高成長モデル」とは異なる構造を示している。

・投資を伴わずに売上を生み出す企業が存在する。

・投資は特定企業に集中せず、広く分散している。

・産業基盤型モデルが実際の成果を牽引している。

つまり、釜山スタートアップは投資主導ではなく、市場と産業の中での検証を通じて成長するプロセスを辿っている。

10.示唆

本分析は、政策の方向性に対していくつかの重要な示唆を提供する。

第一に、短期的な資金調達の成果に偏重した支援から脱却し、スタートアップが既存産業と連携しながら実際の売上を創出できる、市場基盤型のプログラムを拡充する必要がある。

第二に、物流・製造・建設といった地域の基幹産業とスタートアップとの連携を強化し、産業課題を解決する革新が継続的に生まれる環境を整備することが求められる。

第三に、投資政策についても初期投資の拡大にとどまらず、一定水準以上の売上を達成した企業のスケールアップを支援する方向へと転換する必要がある。

とりわけこうした傾向は、ユニコーン企業を中心とした高成長モデルのみでは地域スタートアップエコシステムを十分に説明できないことを示している。
釜山では、企業価値ではなく、実際の売上や産業内での役割を基盤として成長する企業がエコシステムの中核を担っているためである。

したがって、単にユニコーン企業の創出を目指すのではなく、地域産業と結びつきながら安定した収益と持続可能な成長を実現する、いわゆる「ゼブラ企業」をいかに育成するかが、より重要な政策課題となる。

結論として、釜山のスタートアップエコシステムは投資主導型とは異なる成長経路をたどっており、市場および産業に根ざした段階的な成長メカニズムによって形成されている。 この点は、今後の地域スタートアップ政策において、成長指標や支援手法の再検討が必要であることを示唆している。

釜山スタートアップの成長モデルを象徴する主要企業

1.Sendy(センディ):B2B産業連携型/貨物輸送の売り上げプラットフォーム
– 所在地: 釜山広域市 釜山鎮区 西面路39 6階9・10号

2.JIENEM(ジネム)B2B産業連携型プラットフォーム/宿泊施設の空間設計、運営受託、技術ソリューションを一体提供
– 所在地:釜山広域市 海雲台区 タルマジキル30 3041号

3.SPMED(エスピーメド):ヘルスバイオ分野/薬物遺伝学、非臨床ADME、臨床試験などのバイオアウトソーシング事業
– 所在地:釜山広域市 北区 ヒョヨル路111 610・611・612・613・614号

4.MUSMA(ムスマ):IoT技術を活用した建設現場向けの安全管理・資産管理ソリューション
– 所在地:釜山広域市 水営区 マンミボニョン路52番キル3 2・3・4階

5.DRIVE FORCE(ドライブホース):船舶・海洋産業向けB2Bエネルギーソリューション企業 
– 所在地:釜山広域市 機張郡 長安邑 医科学2路 88

📌用語整理 

 🦄 ユニコーン(Unicorn)

  ・企業価値が1兆ウォン以上の未上場企業
  ・投資主導の成長モデル
  ・急速な拡大と市場先行を重視
  ・赤字を前提とした成長戦略
  ・EXIT(IPO/M&A)による価値実現
     [キーワード]スピード/拡張/投資/企業価値

🦓 ゼブラ(Zebra Company)

  ・収益性と持続可能性の両立を志向する企業
  ・売上を基盤とした成長モデル
  ・産業・顧客課題の解決を重視
  ・黒字、または財務的に安定した構造
  ・地域や産業との連携を重視
    [キーワード]収益/安定性/課題解決/持続性

[釜山スタートアップエコシステム分析 Full Report]

本内容は、革新の森とConnective Worksが共同で制作した「2026年 釜山スタートアップエコシステムレポート」をもとに作成されています。

「地域のスタートアップエコシステムの現状を、正しく捉えていますか?」

地域革新は、大きなスローガンではなく、まずデータに基づいて現状を把握することから始まります。地域にどのようなスタートアップが存在し、どの分野が成長しているのか――その流れを読み取ることで、政策・投資・協業の方向性が見えてきます。

革新の森は、地域スタートアップエコシステムを可視化するデータを提供しています。主要企業の状況から分野別の強み、投資動向まで、地域革新の企画に必要な情報を一元的に確認することが可能です。Connective Works(コネクティブワークス)は、これらのデータを基に、自治体・研究機関・投資家と連携し、実践的な政策立案とエコシステム研究を進めています。現状分析から仮説構築、インタビューや現地調査に至るまで――データが問いを生み、現場がその答えを導き出します。その成果は、エコシステム活性化施策の設計、誘致企業の選定、自治体の革新戦略策定へとつながっています。

地域革新を推進するうえで、革新の森とConnective Worksが支援します。
データに基づいて課題を整理し、現場と連携しながら具体的な解決策へとつなげます。

 

原文:https://www.innoforest.co.kr/report/NS00000496

革新の森:https://www.innoforest.co.kr/
マークアンドカンパニー:https://markncompany.co.kr/