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知っておきたい「NFT」(4/4):NFTに対する課税上のイシュー|法律・税務

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世界的にNFTブームが起きている中、韓国内でもNFTプラットフォームを通じた取引が活発になされています。しかし、このような大衆の関心に比べ、税法の領域内では、まだNFT取引が課税の対象に該当するのか、もしそうであれば、どのような方式で課税すべきか等について、明確に定められていない状況です。

NFTの課税の有無及び課税方式を論じるためには、NFTの法的性格から定義する必要があります。しかし、以前私どものニュースレターで言及したように、NFTはその特性上、法的性格を一律に定めることが難しく、場合によって、特定金融情報法上の暗号資産や資本市場法による証券のうち、特に、投資契約証券、あるいはさらに進んで、原資産に対する権利(著作物に対する著作権または著作隣接権)の譲渡とみるなど様々な可能性が存在します。

そのため、今回の第4編(最終編)では、NFTが①暗号資産、②投資契約証券あるいは③原資産に対する権利(著作物に対する著作権または著作隣接権)に該当する場合を仮定し、それぞれの場合に現行税法の枠組みの中でどのような税務イシューが発生し得るかを下記の通り検討します。

I. NFTに対する所得税及び法人税イシュー1

以下では、特定のNFTが①暗号資産②投資契約証券あるいは③原著作物等に対する権利に該当する場合をそれぞれ仮定し、現行税法の枠組みの中で、それぞれの税務イシューについてみてみます ²。(ただ、NFTは原資産の分類や所有権・受益権等と結び付くかどうか、fractional NFTに該当するかどうか等によって、NFTの移転を原資産の移転とみるべきかなど法的性格及び税法により判断が異なる可能性があり、韓国ではこれに関する議論もまだ初期段階にあるので、NFTが課税対象かどうかについては、金融及び課税当局の動向を持続的に確認する必要があり、各事案ごとに個別の判断が必要となり得ます。)

1.暗号資産に該当すると仮定する場合

改正所得税法により、個人居住者の暗号資産の譲渡及び貸付を通じて発生する所得に対しては、2023年1月1日からその他所得として所得税が課税される³予定です。したがって、NFTが特定金融情報法による暗号資産に該当するかどうかによって、その他所得として課税されるかどうかが判断されるものと思われます。

これに対して最近金融委員会は、NFTは多様な様態が存在するので、全てのNFTを一般化して特定金融情報法による暗号資産と規定するのが容易ではない面があるが、個別事案ごとにみたとき、一部(決済・投資等の手段で使われる場合)は、暗号資産に該当する可能性があるという立場を明らかにしました⁴。 

仮に、特定のNFTが特定金融情報法による暗号資産に該当する場合であれば、改正所得税法により、個人居住者の場合、2023年1月1日以降に暗号資産を譲渡・貸し付けることによって発生する「暗号資産の所得」は、その他所得とみて、課税されます。

また、個人非居住者の場合、2023年1月1日以降に暗号資産を譲渡・貸し付けたり、特定金融情報法に定義された暗号資産事業者に保管・管理した暗号資産を引き出す場合、これを国内源泉その他所得とみて課税されます ⁵。ただし、租税条約の内容によって、暗号資産の所得に対して非課税・免除の適用を受ける可能性もあります。

2.投資契約証券に該当すると仮定する場合

第1編で扱った通り、NFTはその特性及び機能によって、資本市場法上の証券の6類型のうち、特に投資契約証券に該当するかどうかが問題になり得ます。改正所得税法によれば、個人居住者の投資契約証券の譲渡により発生する所得に対しては、2023年1月1日から金融投資所得として課税される予定です。

金融投資所得の場合、その他所得とは異なり、欠損金の繰越控除を許容しており、適用税率にも差があります⁶。 

また、改正所得税法によれば、金融投資所得の課税は国内居住者に対してのみ適用されるものと思われます。ただし、投資契約証券を内国法人が発行した場合であれば、当該証券の譲渡により発生する所得は、当該非居住者の有価証券譲渡所得とみて課税される可能性もあります。しかし、この場合にも、租税条約の内容によって非課税・免除の適用を受ける可能性もあります。

3.原著作物等に対する権利に該当すると仮定する場合

第2編「知的財産権編」で扱ったように、原著作物等に対するメタデータのみを持っている基本的な形態のNFT取引であれば、原著作物等に対する著作権の譲渡に該当することはないと思われますが、NFT取引の際に、原著作物等に対する著作権まで譲渡するものと契約を締結する方式で取引がなされる可能性もあります。

所得税法によれば、個人居住者が美術・音楽または写真に属する創作品の原作者として、その創作品に対して受け取る対価はその他所得として課税され、著作者または実演者・レコード制作者・放送事業者以外の者が著作権または著作隣接権を譲渡したり、使用させて受け取る対価もその他所得として課税されます。すなわち、NFTが美術・音楽または写真に属する創作品を原著作物等としてミント(Mint)された後、原作者がこれを創作品に対する権利とともに譲渡することになれば、これは創作品に対する対価とみて、その他所得として課税され るか否かが問題となる可能性があり、著作者以外の者が原著作物等に対する著作権または著作隣接権が結び付いたNFTを譲渡することもその他所得として課税されるか否かが問題となる可能性があります。

非居住者の場合、所得税法では、芸術上の著作物に対する著作権の譲渡は、使用料所得の範囲に含むものとみていますが、租税条約によっては、上記資産の譲渡対価を使用料から除外しているケースが存在します。したがって、非居住者の課税の有無に対しては、租税条約の内容等について個別に検討する必要があります。

II. NFTに対する付加価値税イシュー

現行付加価値税法では、暗号資産の付加価値税の課税の有無について規定していません。ただし、最近、企画財政部では、暗号資産の供給は付加価値税の課税対象に該当しないという有権解釈7をしており、国税庁もこのような企画財政部の解釈と同じ立場であると理解されます⁸。

ところが、付加価値税法では、財貨または役務の供給をその課税対象としており、ここでいう財貨とは、財産価値のある物及び権利と定義しており、「権利」とは、物以外に、鉱業権、特許権、著作権など財産的価値がある全てのものとすると定めています。また、大法院は、「権利」に該当するためには、その権利が現実的に利用され得て経済的交換価値を有するなど客観的な財産的価値がなければならないとみています⁹。

これをNFTに適用すれば、NFT自体が決済手段として使用されて暗号資産に分類されたり、あるいは受益権の分配等と結び付いてその証券性が認められる場合、付加価値税法上の課税対象に該当しないとみる可能性があると思われます。しかし、仮にNFTが著作権のような原資産に対する権利が結び付いて存在し、その権利が現実的に利用され得てNFTが取引される市場が存在するなど経済的交換価値が存在するとみることができる場合であれば、NFTが独立して付加価値税の課税対象である「権利」に該当すると解釈する余地もあるとみられます。したがって、NFTが付加価値税法により課税されるかどうかについては、NFTの性格によって判断が異なるといえるので、これに対する関連機関の立場を持続的に確認する必要があるといえます。



¹現行法人税法の規定により、内国法人は純資産増加説によって NFT の法的性質とは関係なく、NFT に関連する所得に対して法人税が課税される可能性があり、外国法人は概ね所得税法上の非居住者と同じ方法で法人税が課税されます。

2 本ニュースレターの分析は、特定の NFT が暗号資産、投資契約証券あるいは原著作物等に対する権利に該当する場合を仮定し、そのような仮定の下で、現行税法の枠組みの中で税務イシューを検討しようとしたものであり、NFT の課税対象か否かに対する弊事務所の意見を表明するものではありません。

3 暗号資産の所得の課税猶予に関する所得税法改正案が 2021 年 12 月 2 日に国会本会議を通過したことにより、暗号資産の所得に対する課税の施行時期が既存の 2022 年 1 月 1 日から 2023 年 1 月 1 日に 1 年猶予されました。

4 NFT が暗号資産に該当するか否かに関する金融委員会の 2021 年 11 月 23 日付の報道説明資料を参照

5  一方、個人非居住者の暗号資産の譲渡に関連する所得に対して、2022 年以前も国内源泉その他所得として課税することができるかについては、課税官庁の課税に対して不服申立が進行中の状況です。

6 暗号資産の所得に対しては、年間 250 万ウォンを超える金額に 22%(以下、地方所得税を含む)の税率が適用されますが、金融投資所得の場合、課税標準 3 億ウォン以下分は 22%、3 億ウォン超過分は 27.5%の税率が適用されます。

⁷企画財政部付加価値税制課-145、2021 年 3 月 2 日

⁸ 基準-2017-法令解釈付加-0313、2021 年 3 月 4 日

⁹ 大法院 2018 年 4 月 12 日言渡 2017 ドゥ 65524 判決

/media/金・張法律事務所(KIM&CHANG)
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金・張法律事務所(KIM&CHANG)

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