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非上場株にも時価がありますか?|会計法人MILESTONEのスタートアップCFO Case Study

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【会計法人MILESTONEのスタートアップCFO Case Study】非上場株にも時価がありますか?

昨年末、証券市場を騒がせていた話題の一つは、Kakao Pay(カカオペイ)経営陣のストックオプション行使でした。上場しから約1ヶ月で、主要経営陣がストックオプション行使で取得した株式、約44万株を一度に売却、上場後上昇したカカオペイ株価にブレーキをかけ、市場に相当な衝撃を与えた事態でした。

当時、Kakao Pay の代表取締役をはじめとする主要経営陣8人のストックオプション行使価格は、一株当たり5,000ウォン(約510円)であり、行使日のカカオペイ終値は18万3千ウォン(約 18,300円)だったそうです。

当時、Kakao Pay の代表であったリュ・ヨンジュン代表の場合、計23万株をストックオプション行使し、ストックオプション行使差益で約458億(約47億円)ほどが発生したと伝えられました。

それでは、このような大規模ストックオプションの行使による差益について、果たしてどのような税金がかかるでしょうか?

ストックオプション行使を通じて得た利益は、行使当時の「時価」と行使価額を差し引いて計算します。会社の役職員が、該当会社から付与されたストックオプションを、勤務期間中に行使することにより得た利益は、勤労所得に該当します。

したがって、既存の勤労所得と合算して6%~45%に達する総合所得税率を適用し、税金が算出されます。

このように上場株式の場合、取引所で取引される明確な時価が存在するが、非上場株式の場合、時価をどのように決定するのでしょうか。主に、有能な人材を獲得するために活用されるストックオプション 制度の場合、上場会社だけでなく非上場企業でも活発に使用しているインセンティブ制度なので、今日は、非上場企業のストックオプション行使時適用時価についてみてみましょう。


売買事例価格

ストックオプション 行使差益算定のための行使時点の「時価」は、法人税法上の時価に従うようになっています。法人税法上では、まず適用される時価は「該当取引と同様の状況で、当該法人が特殊関係人以外の不特定多数と継続的に取引した価格、または特殊関係人ではない第三者間で一般的に取引された価格がある場合には、その価格」、つまり「売買事例価格」です。

非上場株式の場合、取引が頻繁な上場株式と異なり、取引が活発でなく、時価算定が難しい場合がありますが、課税官庁は、客観的な交換価値が適正に反映された正常な取引の事例があれば、その取引価格を時価と判断しています。

どの取引が、その取引対象の客観的な交換価値を、適正に反映する一般的で正常なものかは取引当事者が、それぞれ経済的利益の最大化を追求する対等な関係にあるのか、取引当事者が取引関連事実について合理的な知識があり、強要によらず自らの意思で取引をしたかなど、取引をめぐる諸事情を総合的に検討し判断するようにしています。

また、売買事例価額は、取引価格としての代表性を持たなければなりません。つまり、取引金額や持分率などが小さすぎると、その価格は売買事例価格として認められにくくなります。

相続税および贈与税法(以下、相贈法)では、一般的に取引された非上場株式の額面価額の合計額が、発行株式総額または出資総額の100分の1に該当する金額、もしくは3億ウォン(約3,000万円)未満の場合、当該取引価額を売買事例価額として認めません。

一方、法人税法では、売買事例価額を「継続的に取引した価格」および「一般的に取引された価格」と定義しているだけで、相贈法のように取引規模に対する具体的な制限をしていないが、関連判例を見れば取引についての諸事情などとともに、取引規模についても売買事例が、売買事例価額の認定可否検討時に影響していることを確認することができます。

関連事例を見ると、『注意2010書0901, 2010.12.10』では、売買事例と認められる取引が、たったの1つに過ぎず、取引譲渡者が保有する全株式のうち少量の株式を取引したものにもかかわらず、相場調整のための取引で、特別な根拠なく、その取引日以降も同様の価額で売買取引および有償増資が施行された点を挙げ、時価と認めています。

『注意2012書4727、2014.01.28』では、比較対象企業および割引率、推定指標等に基づいて算出された外部評価機関の株価評価額を参考に取引した価額が、時価と認められることを確認することができます。

同事例の場合、取引当事者間のコネクションが存在する場合もあるが、法人税法上、特殊関係ではない取引当事者間のコネクションまで考慮し、売買事例価額が不当であると認めることは困難であり、相当数の買手が買収後に株主として権利を行使している点などを踏まえ、売買事例価額を認めています。

一方、法人が少額株主から自社株を買い取る取引の場合、当該法人が非上場株式評価報告書および未来実績に対する見通し等を独占しており、法人が株主に非上場株式評価に関する情報を提供したとしても、適正でない評価に基づき、株主に偽の情報を提供したものとみられるため、請求法人が優越した地位で、偽の評価書をもとに株式譲渡譲渡取引をしたものとして、これを正常な取引と見なせないず、時価として認めない事例も存在します。 (注意2021書2242、2021.10.20)。


非上場株式の相贈法補足評価額

法人税法では、上記のような売買事例価額が不明確な非上場株式の場合、相贈法を準用し評価した価額を、時価とみなすよう規定しています。相贈法による非上場株式価値は、一般的に3年の損益(純損益価値)と、純資産(純資産価値)を、それぞれ3と2の割合で加重平均し計算します。

ただし、相贈法上 IPO を準備中の法人に該当する場合、 1) 公募価額および 2) 純損益価値と純資産価値を加重平均して算出した非上場株式価値評価額のうち、大きい金額で評価する規定があるため、留意しなければなりません。

今日はストックオプション行使時の行使差益を計算する税務上の時価について見てみました。行使差益計算時に適用する時価は、ストックオプションを行使する役職員個人の所得税だけでなく、当該ストックオプションの付与した法人の法人税にも影響を及ぼすことは、重要な事項です。

非上場株式の場合、時価判断においては、全体的な状況や関連法令および判例などに基づき、専門的判断が必要になる場合がありますので、必ず専門家の手を借りることをお勧めいたします。


筆者紹介:会計法人Milestone

著者ブログ:会計法人Milestone公式ブログ


原文:https://platum.kr/archives/184673

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