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56日で消える包装材で「大ヒット」…シャネルからも選ばれた企業とは?

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56日で消える包装材で「大ヒット」…シャネルからも選ばれた企業とは?

  • [スタートアップストーリー] Marine Innovationのチャ・ワンヨン代表

「シャネルやロレアルなどの世界最大の高級ブランド・美容企業はもちろん、アメリカのコスモポリタンホテルなどからも、環境にやさしい包装材や食品容器を作ってほしいという問い合わせが相次いでいます。企業名は明かせませんが、名前を聞いただけで分かるようないくつかの企業にはすでに納品を行なっています。」

Marine Innovation(マリンイノベーション)は、テングサやホンダワラなど廃棄される海藻の副産物を繊維化してパルプなどの素材に変えた後、それを使って環境にやさしい包装材を作っている企業だ。チャ・ワンヨン代表(48)は最近、アメリカとヨーロッパへの出張が多いという。

気候危機を克服するための「脱炭素経済」への転換が急務となり、世界の企業が一斉にESG(環境・社会・ガバナンス)経営の強化に乗り出したことで、様々な製品開発依頼が殺到しているからだ。

通常、食用に適さない海藻や昆布の茎・根は捨てられるか、堆肥として使用される。

2019年に設立したMarine Innovationは、堆肥に適したこのような海藻類の副産物を加工し、環境にやさしい使い捨て容器や包装材などを生産している。

同社が作った海藻紙コップは、韓国分析試験研究院(KATR)のマイクロプラスチック分析試験で「不検出」の認定を得ており、ドイツの標準協会認証機関(DIN CERTCO)からは「56日生分解認証」も付与された。約56日内に、土壌で完全に腐り、分解するくらい生分解性に優れているということだ。

チャ代表は、「木材紙とプラスチックは原料価格がそれぞれ1トン当たり1,200ドル(約17万5,000円)、600ドル(約9万円)であるのに対し、海藻素材は200ドル(約3万円)程度と比較的安い。」とし「製造工程で化学物質を使わずに済むし、生分解期間も木材は6ヶ月、プラスチックは500年以上かかるが、海藻素材は56日で完全に腐敗して消える。」と話した。

Marine Innovationは海藻副産物加工及び製造工程に関連する50件以上の特許を保有している。「海藻類パルプを利用した金型製造法」などの核心技術は、アメリカ、ベトナム、インドネシア、マレーシアなど海外でも特許を取得した。今後は、現地工場建設のための計画を進めるという。

また、これら多くの特許により各種表彰式でさまざまな賞を獲得している。海洋水産業の発展に貢献した功績で「2021海の日」に大統領表彰を受賞し、世界包装機構(WPO)が開催した「2021ワールドスターグローバルパッケージングアワード」でも、海藻製卵トレーで入賞した。昨年は大韓民国発明特許大展で国務総理賞を受賞した。受賞した直後には供給契約も続々と締結されており、昨年は海藻製卵トレーの輸出で、約5億ウォン(約5,500万円)の売上を上げた。

海藻製卵トレー/写真=Marine Innovation

 チャ代表がこのようなBM(ビジネスモデル)を準備したのは20年前からだ。

当時、HYUNDAI(現代自動車)グループの系列会社であるHYUNDAI GLOVIS(現代グロービス)で、エネルギー資源を取り扱う物流部門に勤務しており、植物性天然資源が将来的に大きなビジネスチャンスになるという確信を持ったという。

その後、バイオマス開発研究を続け、2019年のSKイノベーション公募展で入賞することに成功した。これにより、5,000万ウォン(約552万円)の事業化資金を調達し、Marine Innovationを設立した。

チャ代表は価格競争力を確保するために大量生産ラインを備える必要があると判断し、昨年末から海外のベンチャーキャピタルを相手に資金調達に乗り出した。これについて、「当社と契約した金型メーカーは比較的小規模で、製品製造の過程で技術流出の可能性もあるため、直接生産ラインを立ち上げることにした。」とし「大量生産体制を整え、将来的に環境規制や炭素排出権のような制度の影響力が大きくなれば、エコ製品が従来のプラスチック製品よりはるかに安くなるだろう。」とチャ代表は話した。

さらに、韓国の環境規制が先進国より緩いと指摘し、より強化する必要があると主張した。「EU(欧州連合)は一昨年、1kg当たり約1万ウォンに達する『プラスチック税』を導入したが、韓国は1,000ウォン(約100円)台にとどまっている。もしこの税金が上がれば、プラスチックの廃棄費用が高くなるため、環境にやさしい製品への需要が一気に増えるだろう。」

Marine Innovationは、中小ベンチャー企業部の技術創業支援プログラムTIPS(ティップス)に選定され、蔚山科学技術院(UNIST)と共同でカニの甲殻に含まれるキトサンを抽出し、環境にやさしいコーティング剤を製造する研究を進めている。チャ代表は、「海藻副産物は幼児・女性用品、自動車用エアコンフィルター、ノート・手帳など、多様に活用できる。」とし「このような応用製品を増やしながら、ココナッツの殻、もみ殻、ビール粕、コーヒー粕などさまざまな天然植物性素材を活用したパルプ化素材の開発をさらに拡大させていく方針だ。」と述べた。



<画像=Marine Innovationのチャ・ワンヨン代表と海雲台の超高層ビルに納品されている自社製品/写真=Marine Innovation>

原文:https://www.unicornfactory.co.kr/article/2023091811115547113


/media/UNICORN FACTORY
記事を書いた人
UNICORN FACTORY

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