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経歴25年VCのアドバイス「経済危機のとき投資成果は最も良かった」

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経歴25年VCのアドバイス「経済危機のとき投資成果は最も良かった」 

世界的な金利引き上げと景気低迷の可能性がスタートアップにも多くの衝撃を与えています。ベンチャーキャピタル(VC)投資市場が萎縮し、スタートアップの価値下落と人員カットの事例も出ています。しばらく、スタートアップの営業環境も厳しくなる見込みです。

しかし、激動の時期はいつでも、準備が出来ている人たちには機会になります。ベンチャーキャピタル(VC)業界では、今年か来年が投資の「豊作」を意味する「グレートビンテージイヤー(great vintage year)」になるという期待感が高まっています。Capstone Partners(キャップストーン・パートナーズ)のソン・ウンガン代表によると、対内外的危機の衝撃に耐えたスタートアップたちは、その分高く跳躍する機会を得てきたといいます。

25年間VC業界に身を置きながら、1990年代末の世界的な為替危機と2008年の金融危機の中でスタートアップの浮き沈みを共にしてきたソン代表が、韓経Geeksを通じて「不況の川を渡る知恵」をお伝えします。 


危機の中でWeWorkとAirbnbが誕生

最近メディアでベンチャー投資の縮小と危機論を一斉に議論し始めた。世界的な景気萎縮の影響で、韓国のスタートアップも例外なく投資が多少保守的になる可能性はあるが、果たしてスタートアップ業界の「危機論」まで提起できるかについては、もう少し冷静に考えてみる必要がある。

まず最近、政府がファンド・オブ・ファンズの2次出資を通じて約1兆ウォン(約1,050億円)規模のベンチャーファンドを組成し、今年のファンド・オブ・ファンズの総出資金額は1兆508億ウォン(約1,100億円)、民間出資金は1兆4843億ウォン(約1,500億円)で、合計2兆5,000億ウォン(約2,600億円)規模に達する。 

また最近、Korea Investment Partners(韓国投資パートナーズ)とStonebridge Ventures(ストーンブリッジベンチャーズ)など、ベンチャーキャピタル業界の大手が設立以来最大規模のベンチャーファンド結成した。この現象は危機論に根本的な疑問を持たせる。

過去の歴史は、私たちに危機論について冷静に考えてみるべき理由を提示している。実際にIMF経済危機以後、第1次ドットコムバブルが崩壊する局面で巨大グローバルIT企業であるGoogleとAmazonが誕生し、2008年グローバル金融危機時にも新たな市場を開拓したWeWork(ウィーワーク)、Airbnb(エアビーアンドビー)のようなスタートアップが誕生した。最も暗かった時期に、新しい経済秩序を作った巨大デジタル企業が成長したという事実は、最近提起されているスタートアップ危機論をどのように見るかについての示唆点を与えている。

また、ファンド・オブ・ファンズの運用会社であるKorea Venture Investment Corp(韓国ベンチャー投資)で発表したマーケットウォッチの報告書でも、韓国ベンチャーファンドの清算結果は2008年が最も良かったことが確認できる。ベンチャーファンドの清算が完了した2004年から2021年のうち、2008年に結成されたベンチャーファンドのTVPI(払込出資金額に対する残余価値と累積分配金の合計額倍率)が3.58倍と最も高かった。金融危機後、企業価値が下落した時点に投資したファンドが良い結果をもたらしたことを証明している。


核心に集中し、思い切って賭けるべし

経済主体が最も恐れているのは、危機そのものよりもむしろ不確実性だ。すべてのリスクが視野に入り、不確実性が取り除かれる時点で反騰が生じる。スタートアップは、その時点が来るまで今の状況に耐えられる会社なのか、自生力を調べることが重要だ。Capstone Partnersでは、投資したスタートアップの70%程度に、最低2年間ファンディングがうまくいかなくても生存できるような支援を行っており、代わりに不要な事業はやめてコア事業に集中し、キャッシュフローを着実に増やすことが必要だと助言している。

コロナパンデミック初期、皆が危機だと考えたが、Capstone Partnersの投資ポートフォリオ社たちはむしろ大きく成長した。超新鮮食品プラットフォームのJeongyookgak(ジョンユッカク)の場合、今年3月にDaesang(デサン)グループのChoroc maeul(チョロクマウル)を買収し市場の注目を集めた。また、一人前ピザブランドのGOPIZZAは、シンガポール、インド、香港市場に進出後、着実な売上成長を記録し、オフライン店舗を拡大し続けている。今年はインドネシア、マレーシア進出を目指している。彼らは危機に屈することなく、むしろ核心に集中し果敢に賭けをしたという共通点がある。

韓国内のベンチャーキャピタル100社以上が業歴20年を超えており、彼らは危機に揺れることなく耐えれば、より良い時期が来ることを経験として知っている。このような理由で、ベンチャー投資市場が低迷しているという世論にも関わらず、ファンドを結成し持続的な投資をしているのだ。むしろ企業価値が低くなり、投資に集中できる絶好の機会と捉えている。ゲッティイメージバンク


国民的サービスになったスタートアップ…より強固に

最近になってスタートアップ業界への視線が格段に変わっている。医師や弁護士のような専門職はもちろん、大企業役員出身のスタートアップ起業も堰を切ったように増えている。米国で最もスマートなエリートたちが起業を選択するように、今や韓国社会もエリート集団がスタートアップ起業に挑戦するという変化の波が来ている。スタートアップ起業者たちから成功ストーリーが拡散され、スタートアップ起業に対する挑戦欲求を刺激したからだ。

2010年初めまで、韓国の富は財閥2、3世の専有物だった。しかし、今年4月にForbes(フォーブス)が発表したKorea's 50 Richest Peopleによると、韓国の富豪50位内にKakao(カカオ)のキム・ボムス議長、Smilegate(スマイルゲート)のクォン・ヒョクビンCVO、Dunamu(ドゥナム)のソン・チヒョン議長、Toss(トス)のイ・スンゴン代表理事など、スタートアップ出身が多数選ばれた。親の富が承継される仕組みではなく、スタートアップ起業を通じて自ら富を作ることが可能であることを証明している。

また、Coupang(クーパン)、Baemin(配達の民族)、Toss、Market Kurly(マーケット・カーリー)、Danggeun Market(ニンジンマーケット)のように、数多くのスタートアップサービスが国民的な必須サービスとして深く根づきながら、越えられないと思われた壁が越えられた。このような挑戦を通じて、誰でも成功神話を作ることができるというロールモデルをスタートアップが作り出し、挑戦欲求を刺激しているのだ。

Capston Partnersは、プラットフォーム、人工知能、バイオ、SaaSなどの分野に継続的に投資する予定だ。また今後10年を見通しながら、エネルギー大転換に備えて審査役を強化し、エネルギースタートアップに投資を始めた。投資を決定するときは、実行力が高くしっかりした技術を持つ会社であるかを確認する。実行力が高いというのは、プロジェクトマイルストーンを設定し、100%集中してそのマイルストーンを迅速に達成するということだ。また、すぐには売上が伸びなくても、お金以外の数字で現れる成長と数字にはあまり現れない開発成果などが、投資と追加投資の重要な指標となっている。

投資家と被投資会社の関係はまるで結婚のようだ。配偶者がお互いにとって良い相手でなければならない結婚のように、投資家が良いスタートアップを選ぶことも重要だが、スタートアップも良い投資家を選択することが重要だ。投資家を選ぶときお金だけが重要なわけではない。一度投資を受けた後、継続的に支援を受けることが重要だ。会社が財務的に少し厳しくなっても意味のある成長を考慮し、緊密なコミュニケーションを通じてお互いを理解しながら投資を続けることができる投資家が必要だ。事業についてよく知らずに、お金目当てで投資してくる投資家は極めて注意しなければならない。

木は冬の寒さに耐えながら立派に成長する。スタートアップも危機論に耐えながら、さらに準備を整えれば以前よりもっと成長するだろう。韓国のスタートアップ業界は、もう風に揺れない木のように根深い木となった。今提起されている危機論を機会とし、韓国経済の未来をつくるさらに強固な経済主体に成長するだろうとあえて断言する。 


ソン・ウンガン代表 | Capstone Partners

韓国の第1世代ベンチャーキャピタルのCapstone Partnersは、良い影響力と正しい企業家精神を持つ起業家に投資しています。スタートアップ設立の初期投資に集中する、いわゆる「マイクロVC」を追求しています。スタートアップの成長を見守りながら、ファンドが可能な限り持続的な投資でサポートをしています。目標を達成するため仕事に集中し没頭するNew Collar(ニューカラー)の起業者を探しています。


[学歴]

韓国科学技術院 電算学(コンピュータ科学) 修士課程修了(1986-1988)

ソウル大学 計算統計学科 学士課程修了(1982-1986)

[キャリア]

Capstone Partnersの設立者および代表取締役(2008~)

MVP Venture Capital(MVP創業投資)の設立者および代表取締役(2000-2007)

米国 ボストン ケンブリッジ Samsung Partners(サムスンパートナーズ)投資チーム長(1998-2000)

Samsungグループ会長秘書室 WIN TFチーム 課長(1997)

Samsung総合技術院 Samsung電子 先任研究員(1988-1997)

韓国ベンチャーキャピタル協会 副会長(2018~)

韓国エンジェル投資協会 理事(2016~)

韓国初期投資機関協議会 理事(2020~)

SNUホールディングス 理事(2021~)

韓国工学韓林院 正会員(2018~)


キャプチャー画像=聯合ニュース 

原文:25년 VC맨의 조언 위기 때 투자가 가장 성과 좋았다 긱스 | 한경닷컴 (hankyung.com) 

/media/韓国経済新聞
記事を書いた人
韓国経済新聞

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